第5話 冒険者の後悔
アシェアは憲兵アニードから話を聞いて後悔した。
もっと強く警告するべきだった。アシェアの中であの宝石が原因であろうと、何か確信に近いものを感じた。
しかし、とアシェアは考えていた。ショーラは呪いにやられた。鑑定の場で鑑定士にはその様子は無かった。単に呪いを
「アシェ……」
ショーラが何か言いかけて止めた。ショーラの気持ちはわかるが、今は後回しだ。
「アニードさん。それで犯人探しを僕達に依頼したいと」
アニードは真っ直ぐにアシェアを見つめ言った。
「あぁ是非ともお願いしたい。今のところ動機はギルド内部の妬みか物盗りのどちらかだと思ってる。しかし犯人が目撃されていない」
それからと、アニードは続けた。
「お前らが鑑定ギルドに預けたという貴重品のことだ。宝石なんだってな。ただの宝石に幾日もギルドが預かるなんて考えられねぇ。どえらく高値な宝石か、何か問題ある宝石か、ただの偶然か、どれだ」
アニードは憲兵として優秀だ。すぐに分からないなら、可能性を一つずつ消そうということだろう。
「あの宝石は北の森を抜けたところにある渓谷で手に入れたものです。鑑定ギルドに預けたのもあれが先史時代の呪いがかかっていると思ったからです。ギルドに警告はしてありました。手に入れたとき、ショーラに呪いがかかったんです」
隠すことでもなくアシェアは答えた。アニードは顎に手を当てながら三人を見回した。
「それでどんな感じなんだ」
ショーラを見て聞いた。
「何て言うか、あの宝石を誰にも渡したくない。安全なところに隠そうって思った。アシェとケッタが助けてくれなかったら危なかったわ」
「俺とアシェが呪いにやられていたらあの場で骨になっていたな」
ケッタが笑って言った。
そうかと、アニードは頷いた。
「さっき先史時代といったな、するとこの国が建つ前、滅んだ王国の時代ということか。二百年以上は前の品だな」
アニードは顎に手を当て目線は上を向いている。憶えている知識を思い出しているのか。
職業柄なのか、先史時代と呼ばれている時代を全く知らないわけではないらしい。魔道士でも表向きのことしか知らないものがいるが、このアニードはやはり優秀なんだなとアシェアは思った。
先史時代といっても今とそう変わらない時代だ。治める者が違い、魔法技術は今よりむしろ進んでいた。衰退した理由は大きな戦争があったからだと学者は言っている。
一般にはその辺は知られていない。領主の政策というわけだ。ここら一帯は昔から今の領主一族が穏やかに治める土地であり、今の領主は素晴らしい人だ。領民にはそれだけでいい。
古い時代がどうであろうと今の暮らしには関係ないからだ。
「あの宝石をギルドに預けた責任を感じています。なんとしても犯人を探しだします」
アシェア達は宝石の預かり金を鑑定ギルドからもらっているので、宝石が無くなっても大金が懐に入る。
だけどそれは責任の放棄だ。自分達が許せなくなる。
「こうなると分かってたら、あんな宝石捨ててくるんだったぜ」
ケッタは吐き捨てるように言い、あの宝石を拾った後の騒ぎを思い出していた。
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