014 ”スライム娘タイラント”VS”赤鬼???”②

 ……あれ? 助かった? よし、勝利のポーズだ! ハイ! アチョー!!


「……なにふざけたポーズ取ってるんだ?」


 だが、勝負はまだ終わっていなかった。鬼になった男は動けなくなっただけで、戦闘能力自体は失っていない。それにこの拘束状態が永久に続くものでもないだろう。


「チッ。なあ、スライム娘。異世界転生は楽しいか?」


「ふん、わらわには心を持たぬ下郎と会話する趣味はないのだ!!」


「なんで口調が変わるの? ロリスラ」


 しょうがないでしょミリットちゃん!! 相手が中二病っぽい必殺技叫ぶものだからそういう気分になっちゃっているの!! というかオマエはもうすこし危機感を持て!

 とまあ、ミリットがまったく危機感を覚えていないのはおれの所為でもあるけどね。だっておれこの赤鬼を圧倒しちゃっているもの。いやー、強すぎてごめん。


「……。おれがわざわざこのガキ使って転生してきたスライム娘と闘ってる意味、分かるか?」


「……?」


「おれもそうだからだ。おれも転生したら鬼の子だった。石を投げつけられ、ツバを吹きかけられる日々を過ごしてた」


 赤鬼に悲しき過去……。いや、実際に悲しい過去に直面すると笑う気にはなれないな。おれも転生してきてから15日間くらいは迫害対象だったわけだし。


「そんなとき、怪物狩りの連中が奇妙なことを口走ってた。転生してきたスライム娘がいると。そしておれは思った。ソイツをぶっ叩いて心をへし折り、ちょうど良い戦力にしてやろうとな!!」


 ついに拘束が切れた!! またあの金棒が襲ってくる、と考えたおれは即座に地面へ置いてあったロケット・ランチャーを吸収する。


「オマエはロスト・エンジェルスを征服するのにうってつけの“怪物”だ!! おれと一緒に来い!! 二度とモンスターが迫害されない世の中をつくってやるからよォ!!」


 弾丸はいつでも放つことができる。だがタイミングを間違えて空砲に終われば、もうおれはハッタリも奇跡も通用しない。あるのは服従の未来だけだ。だけど、そんな未来なんてごめんだね!!


「おれは誰にも屈服しねえ!! もう自分の前世すらも忘れちまったから不安も遠慮もないんだ!! 行くぞォ!!」


 おれの考えは始めから決まっていた。肉を切らせて骨を断つ。男ならば多少の危険を背負ってでも勝たなければならないときがある。本来ならば喰らわなくても良い攻撃を喰らってでも、だ。


無縁俗むえんぞく……重羅刹じゅうらせつッ!!」


 再び頭に鈍痛が走る。だがおれはめげない。ニヤリと笑い、景気づけの必殺技名を叫ぶ。


「スライム・アンド・ロケット!!」


 スライムが絡まったロケット弾。そのままの意味である。ひねりなし。

 ただし威力は絶大だ。最前使い切れていなかったライターの炎が弾丸へ重なり、赤鬼になった男を突き刺したッ!


「オマエの過去よりミリットの未来のほうが大切だ!!」


 爆散して、赤鬼が吹き飛ばされた。


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