第99話

 此処って、めちゃくちゃ宴会好きだ。それも段々酒盛りとなり、無礼講となりどんちゃん騒ぎとなる。

 とにかく酒の好きな種族の様だ。

 そんな騒ぎの中、とっくにプライベートスペースに引っ込んでしまった、今上帝が宮部と佐藤を呼んだので、宮部と佐藤は今上帝の待つ内裏に向かって、日本の何とか張りよりよく鳴る廊下を歩いていると、ちょっと赤ら顔の工藤に会った。


「今上帝に呼ばれた?」


「呼ばれた」


 的な会話をして、ちょっと足元が覚束ない工藤を支えつつ、何とか張りを聞きながら今上帝のプライベートルームにやって来た。


「来た来た……」


 とか言って、長谷部が御簾の外で待っていた。


「一体何の御用でしょうか?」


 宮部が長谷部に小声で聞くのを、佐藤は耳をダンボにする。


「どうやら職が、我々に与えられるらしい」


「職?」


「あの……省より下で、 司より上の官?」


「そうそう………中宮職とか東宮職とかの〝職〟。まっ官司の等級の一つなんだが、格式高いというか格が上というか………其処に日本人部署を設けて今上帝直属の部署とする」


 意気揚々と語る長谷部に、宮部は冷めた感じで


「今と同じですよ?」


 と言った。そうそう、今だって今上帝直属………。


「あーーー。その〝職〟に置かれるんだ、我々の部署が………」


 長谷部の興奮振りからすれば、きっと凄いのかもだけど、初心者マークの取れない佐藤には、その興奮が伝わらない。


「この国って、格差とか格式とかあるんだわ。その格式高い官司に、自分達が置かれるって、めちゃくちゃ嬉しくない?」


「あーーー実感が………」


「つまり超エリート部署、みたいなもん?」


 酔っ払い工藤が言った。


「いや、まったく佐藤君同様、実感が湧かない………」


 宮部もそう言いながら、とにかく御簾の中に入る事にする。

 すると今上帝は、畳の上の茵……座布団に座って四人を見つめた。


「おっ参ったか?なんだ酔いが回っているのは、工藤だけであるか?」


 此処では最高権力者に会うのに、シラフでなく泥酔していてもいいらしい。


「………あのどんちゃん騒ぎが、ちょっと………」


 佐藤が、渋い顔を作った。


「無礼講である」


「そうなんすが………」


 とか言いつつ、今上帝より一段下のフローリングに腰を落とす。


「そろそろ準備を致す事とする………と申せど、暫し猶予があるゆえ、じっくりと考えて参りたい。その為にそなた等を呼んだのだ」


「はい」


「いや、そなた達日本人が、此処に馴染めるか否か、それは重要であると考える。………で、まずはそなた達で試してみたが、案外そなた達は柔軟であり優秀である。ゆえにこれからの、日本の者達の行く末を、じっくりと考えて参りたいと思っておる」


「……………」



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