第98話

「年が明けると、人事移動的な除目とかがあるんだけど……まっ我々日本人には関係ないけどね。それでも此処の官人と同じ職場に、配属される事もあるんだ」


「えっ?貴族達って、俺らを快く思ってないんじゃないんすか?」


「そんな事はないよ。今上帝が一番のお気に入りだから、一目も二目も置かれるよ………ああ。確かに、客人様的扱いは否めないけどね」


「客人様的扱い?」


「結局大した仕事は、させてもらえないか……。僕らはいつまで経っても〝客人〟なのさ。此処の、住人として認められない。三世四世になっても、客人の子孫って感じかな?だけど、今上帝が気に入っているんだから、待遇は変わらない。第一此処の人々は、兄国である日本には好意的だ。前にも言ったけど、結婚相手としては、物凄く喜ばれるよ」


「ずっと思ってたんすけど、召喚者って女性は居ないんすか?」


「あーーー確かに………。以前は居たと聞いた事があるけど、かなり前の話しで………たぶん当時の帝の、皇后とか后妃とかになってるんじゃないかな?」


「マジすか?」


「大体此処に呼ばれるのは、聖域で帝と波長が合った者って言われてる。って事は、帝のお気に入りな訳だから、異性だったら〝傍に置く〟意味が違ってくる」


「あーーーなる程。って事は、今上帝はヤバいすね」


「そうそう………っていうか、らんの皇后が居る限り、絶対呼べないよなぁ」


 とか言って笑っていたら、牛車が止まって、宮中の門の前に着いた事が解った。

 牛飼童うしかいわらわとか呼ばれている、牛の世話係が差し出す足場を使って、宮部の後から佐藤も牛車を降りた。

 相変わらず放された牛は、宮中の城壁の辺りで放尿………最高微生物の登場である。宮部と佐藤のシェア屋敷は、高級住宅街にあるから、物凄く偉い人達と同じ門を使う事を許されている。それ自体が、もはや今上帝のお気に入りのお気に入りだと、貴族達に言っている様なものだから、元旦早々居合わせてしまったお偉いさん達に、いい感じで目に付けられている感がヒシヒシだ。

 いやいや今上帝の関心を得る為にだけに、婿候補にはしないでほしい。それも妻帯者の宮部迄、全然気にしないで候補になるなんてマジで怖すぎる。仲睦まじい宮部夫婦が、仲違いなんかしたらどうするんだ!とかなってもいない事に、プチ憤慨する佐藤は、まだまだお子ちゃまだ。

 そんな二人に、上級貴族達は愛想よく挨拶なんかしてくる。二人はどうにかやり過ごして、健康石みたいな砂利をじゃりじゃと進んで、公的スペースの殿舎に行って今上帝にご挨拶する。

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