第88話

 とか言って、宮部は笑った。


「何せ皇后が神獣のらんで、物凄〜く嫉妬深いらしいから………」


「あーーー皇后様から聞きました」


「あっそ?………で貴族って凄く身分制度に煩くてさ、正妻………本妻さんは身分の高い女性を選んで、そのバックに居る身分の高い父親の権力に頼るんだ。そんでもって愛人っていうか、本妻さん以外の女性は、それより身分が低い父親の娘って事になって………身分の高い人は、自分の娘をより良い相手に嫁がせ、地位の安泰を図る訳だ。そこで、今現在今上帝には、大神様が決めたと言われている、神獣らんの皇后が居るから、それより身分の高い相手なんかいない訳だから、皇后以外に后妃なんて有り得ない………というので、今上帝の覚えめでたいとされる、日本人が上級貴族の婿に狙われる。ところが、僕達って一夫一婦制世代だから、奥さん以外の女性と恋愛なんて考えられないじゃん?」


 とか珍しく同意を求めてくる。

 まぁ、あんなに綺麗な奥さん持つと、力説したくなるのは解らなくもないけど。


「ずっと上の世代には、どっぷり此処の慣わしにハマった、日本人ひともいた様だけど?………なんかヒヒじじい呼ばわりだよね………」


 律儀で真面目な宮部が、溢しそうな事だ。


「………で、前にも言ったけども、延登子は貴族の姫様じゃなくて………というか、身分の低い母親が産んだから、認知もされずに育った外婚子なんだけども、僕が此処に来た時にいろいろ世話をしてくれて………信頼が愛情に変わって結婚したんだ」


「いやいやあんだけ美人なら、好きになっちゃいますって………」


「まぁ………そうなんだが………」


 またまた珍しい事に、赤面なんかして愛妻家だ。


「それで、此処の格差からいうと使用人の女性って、主人に手篭めにされても泣き寝入りする感じなんだ」


「えーーー」


 とか言ったが、こういう事は何処でも聞く事で、近代国家といえども、まだまだ女性は弱い存在だ。


「それで僕と結婚する時も、まさか本妻というか、正式な妻として迎えてもらえるとは、思っていなかった様でさ………凄く驚かれたのと同時に、凄く喜んでくれたわけさ。すると僕が今上帝の側に仕えているから、認知もしなかった父親とか、延登子の母親を虐げてた、本妻の子供とかが延登子にすり寄って来たりしてさ………ところが今上帝って、そういう事を嫌うタイプだから僕も口添えできないし、延登子がそんな父親の方とは、縁切りになってたからか、結局親族とは付き合っていないんだけどさ………」


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