第87話

「堅物の大地の大神が、此処を近代国家とするとは思えない………ましてそんな事をしてはいけない国ならば、日本が此処に合わせて行く事になるしかない」


「………ああ、そうすね………」


「ところが天の大神は、近代的な先進国の文明が気に入ってる」


「えっ?つまり天の大神は、その文明を守ってくれてるんすか?」


「………その文明にハマっている間は………だろうなぁ?かなり気分屋な性格らしいから………」


「えっ?飽きたらポイっすか?」


「ポイだろうなぁ………」


「まじかー」


 神様って案外自己チューなのか?

 なんか〝神様は助けてくれる〟とか勝手に思っていたけど、それって人間の都合のいい思い込み的な事なのかも?

 よくよく考えてみたら、人間が神様に助けてもらえる理由ってなんだっけか?

 佐藤なんか、神様だから助けてくれると思ってた。血も繋がってないのに………。


「ところでさ………」


 お気に入りの茶碗蒸しを、グチャグチャと掻き回している佐藤に、宮部がトーンを変えて言った。


「明里と、その後どうなった?」


「………どうなった?って……お世話になってます」


「いやいやいや………そういうんじゃなくてさ………」


「?????」


 宮部は佐藤をガン見して、どうしたものかと思案している様だ。


「………何すか?」


 すると宮部は


「延登子が、煩いから聞くんだが………」


 と投げやり感満載で言う。


「はぁ………」


 あの美人妻の延登子さんが、一体何を佐藤に聞きたいのだろか?ちょっとドキドキしたりする。


「延登子は、佐藤君の結婚相手を心配しててさ」


「えっ?結婚すか?………てか俺成人してるっすけど、就活中の大学生っすよ?」


「あー。日本でいえばな………」


「はぁ………」


「………と言っても、此処は中津國であるわけで………」


「あーーーはぁ………」


「…………で此処では、一応貴族だ」


「……………」


「つまりセレブって事。特に僕ら日本人は、今上帝のお気に入りだから、今上帝に気に入られたい貴族達は、僕らと娘を結婚させて婿にしようとするんだ」


「えっ?まじっすか?」


「うん。………で此処って、若い世代は嫉妬深い皇后に気を遣って、側室とか持たない今上帝を習って、一夫一婦なんだけど、原来は一夫多妻制で、妻を数人持ってもいいわけよ」


「ええ〜いつ時代の話しすか?」


「………っーても、此処昔の日本を傚ってるから………っていうか、今だって地位と金のある男は、愛人数人持ってるしな。男ってそういうもんとかいうと、此処でも顰蹙もんだよ?最近じゃ………」

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