第84話

「ゆえに大地の大神様は依怙地となられ、天の大神様のお言付けに反発される始末で、やり込められれば辺り散らして、火山を噴火させたり地を揺らして悔しがられる。なんとも幼稚なお二方なのだ………」


 とか皇后は今上帝みたく、大きく嘆息を吐いて見せた。


「………案外、大神様って幼稚なんすね」


 佐藤に言われては、大神もおしまいだ。


「………という事だから、なかなか事が運ばぬのであろう?」


 なんか無理くり〆に掛かっているけど、一体何?

 佐藤が皇后を、マジマジと見つめた。


「そなたの職の事である」


「えっ?」


「天の大神様が日本に降臨されておれば、日本を丸ごと持って来る話しは無い。というて、天の祖神の希望でもあるゆえ、必ず其処に生きる物達を此処に持って来る。今上帝は今ご苦悩であられるし、私も大地の大神様と天の大神様の事であるから、杞憂でならぬ」


「あーーー」


「………だがいずれそなたの国のもの達は、此処に参る事になろうから、しかと役目を果たすのだぞ?」


「はい」


 佐藤が顔を明るくして言ったから、皇后はにこやかに微笑んで後光を指した。


 ………あ!眩しい………


 クラクラする佐藤に、皇后は


「そなたも申しておったが、今上帝は青龍を抱いておいでだ」


 と言った。


「…………はい」


「青龍は力を欲する………」


「………はぁ………」


「ゆえに、今上帝は日本を必ず此処に持って来る」


「?????」


 またまた理解不能な佐藤を見つめて、皇后は煌びやかな五色の襟元のある、同じ色を大きな袖口に重ねた袖を揺らした。


「さても………他国の大神が如何致すか………それがこれからの見ものであるが、万が一他国の大神が主上と同じ所業を致したら?」


「………天変地異が地上で起こり、その間地球上の国々は、此処の様な異世界で生き延びます………って、此処が外界の様になるんすか?」


 佐藤が、頓狂な声を出した。


「否、それは無い………つまり大神が持つ世界は、別々に存在するという事だ」


「あーーーなら、別々に………」


「地上が収まり新たな世界が開けた折、その浄められた大地に日本を戻す」


「他国も戻しますよねー」


「全ての大神が、今上帝と同じ事をするとは限らぬゆえ、地上の大地は有り余る」


「えっ。それって残酷な話しすね」


 佐藤はちょっと想像して、渋い顔を作って言った。


「それぞれの神々の致す事であるから、致し方あるまい?」


「はぁ………神様って、案外冷たいんすねぇ………」


「それが真実である。そなた達人間は、己に都合よく考えがちだ………だから事を悪くするのだ」

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