第81話

「あーーー」


 そしてそれがシークレット事項であるか否か、考えて話さなくてはならない事も、ほんのちょっとだが解り始めている。


「何を躊躇っておる?日本を此処に、移すというヤツである」


 皇后があっけらかんと言うから、佐藤の方が気配りをする様に、周りを気にする様子を見せた。


「何をキョドッておる?此処にはチクる者などおらぬから、安心して話すがよい」


 皇后はそう言って、側に仕える女房女官を見回した。


「よいか?私は大地の大神様が、一番のお気に入りの娘なのだ。八百万の神々とて恐れておるからな、私を怒らせる者など、今上帝以外にはおらぬ」


「えっ?帝が皇后様を、怒らせるので?」


 ヘタレな佐藤は、女子とあんまり交際経験がないから、男女の諸々が解らずに聞いた。


「あったり前であろう?今上帝が、わたし以外のものに、目を向けてみよ。激おこである」


「帝が皇后様以外の女子に、目など向けるはずはないしょ?こんなに美しいのに………」


 経験の無い無知な男は、恥じらいも無く心中を吐露する。時と場合によっては、命取りともなりかねないけど………。


「むふふ………そなたは素直よなぁ………しかしながらわたしは、鸞族であるからな。物凄〜く嫉妬深いのだ………であるからちょっとでも今上帝が、余所見をすると爆発してしまうのだ」


「うわ!マジすか?………それって絶対誤解ですって!」


 佐藤の心中は今回においては、皇后の気分を上昇させて行く。


「………である。がついつい怒ってしまうのだ。それはわたしが、今上帝の抱く青龍の力を抑えるが為に、主上の御心を全て欲するからなのだ」


「えっ?帝の青龍?帝って本当に、龍を抱いているんすか?」


「当然である。ゆえにわたしが嫁したのだからな」


「?????」


 理解不能な佐藤の様子を見て、皇后は無知な佐藤を理解した。


「神獣らんと鳳凰は、青龍の力を抑える力を持っておるのだ 。ゆえに龍を抱きし天子が誕生致すと、鳳凰族か鸞族の姫が今上帝の元に嫁す事になる。大体古のよしみで、鸞が嫁す事が多いがな………」


「古のよしみ?」


「ああ………大昔から鸞が嫁す事が殆どだから、それが常となっておる。ところが鸞は、伴侶の愛情を糧にその抑える力を蓄える。だから今上帝の愛情は、一身に我が身に注がれなければならぬ。まっ元々嫉妬深い種族なのだ」


 なんとも明け透けな皇后は、女子と大して付き合った事の無い、ヘタレで無知な佐藤に、いろいろと講釈をしてくれる。

 有り難く一生懸命聞いている佐藤だが、理解はできていない様子。

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