第80話

「一応、帝直属の部署に所属してるっす」


「それが蔵人であろう?」


「………全然違います」


「さようか?私はてっきり皇后職とか皇太后職とかの、手伝いをも兼ねておるのが、そなた達だと思うておった」


「…………………」


 ………違わなくない様な気がする………


 と思案する佐藤だ。

 この国にやって来て、どの位経つのか解らないが………実は此処は時の観念があやふやで、暦とかあるのだがちょっと複雑過ぎて、佐藤では理解できない。その暦に昨今流行りの占いが、陰陽寮という部署の陰陽師によって書かれているが、近代国家出である日本人達は、余り信じていない感がある。

 ………当たるも八卦当たらぬも八卦………だ。

 ところが此処の住人達は、宮中の貴族達が先立って、物凄くその占いに凝っていて、それが市井の国民達に浸透している感じだ。

 まぁ今上帝は、此処には在わさないけど大神の子孫であるし、此処のあちこちには妖とか物の怪とか鬼とかが、今上帝の為にいろいろ働いているらしいから、占いとかスピチュアル的な事に、重きを置いても仕方ないと思うけど………。そういった事を実感しないどころか、否定的な世界に居た佐藤には、そういった占いで日常が左右されるだけならまだしも、政治とか国政に作用するのはどうかと思う訳で……そういった感覚を、神獣のらん族であると言われている、皇后が同じ感覚を持っているのにはかなり驚きを持つ。それだけではなく神獣の皇后は、佐藤達と同様の感覚を持っているから、こうして此処のしきたりである、御簾とか几帳を取っ払って、直に佐藤達と会ったり、タメ口を許してくれたりして、頻繁に呼んでくれたりもする。そしてその話しとかは、お伽噺の様な時もあれば、日本に共通するものもあって実に面白い。だから美し過ぎる皇后様を前にして、ドキドキしながらも、ついつい話しに夢中になってしまう。

 そんな皇后だから、ちょっと此処の複雑な面倒くさい組織を、余り理解していない説は否めず、それに輪を描いて、まだまだ組織に慣れていない佐藤だから、話しはあやふやのまま進んでしまうのは毎度の事で、それを二人は全然気にしないから、結局理解しないまま終わってしまう。と言っても、日進月歩……畳の目の幅づつは、佐藤は此処の組織を理解しつつある。


「そうそう、新たな職ができるのであったな?」


 皇后は膝を打つ様にして、佐藤を見て言った。

 ちょっとしたり顔ぽくて、笑っちゃいそうになったが、ソコは少し我慢ができる様に、佐藤は成長している。

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