第78話

「手付かずの大地があるからな………其処に兄国を、持って来るおつもりなのだ………」


「えーーー?そんなに大きな、空き地があるんすか?」


 佐藤が言うと、宮部が傍で


「空き地じゃない!」


 と突っ込みを入れる。


「そうなのだ。ただ葦が生えておるだけなのだ。其処にすっぽりそのまま、こう……持って来るおつもりなのだ」


 とか言いながら、脇息から身を乗り出して、両手で日本ぽい形を作って、フワフワとさせながらスポッと置く様にした。


 ………うおー!神技………


「スポッと汲み取って、スポッと持って来る感じである………いとも容易く簡単である………しかしながら大神様が渋られるモノを、サガさにやられては、面倒な事となりえるのだ………」


 どうやらコノ渋る〝大神様〟は、大地の大神様らしい。

 ハァ〜と今上帝が嘆息を吐くと、佐藤も宮部も息を吐いた。


「それでどうして、日本に降臨しているんすか?」


「日本の近代文化を、堪能しておいでなのだ………」


 と言って、今上帝は二人に掌を振って


「否、表向きは視察………視察である」


 前言を、撤回する様子を作った。物凄くわざとらしいけど………。


「………大神様には視察だという事で、ご降臨なされたのだ………」


「………視察?」


「………如何程に大地が穢れておるのか?とか、天と地を揺るがして、浄化する程であるのか?とか………大神自身で判断される為〜のなどと諸々御託を並べて………まぁ遊び呆けておられるのだが………それを堅物であられる大神様は、魂胆を見透かされている訳だ………」


 遊び呆けているのが対の大神様で、堅物の地の大神様はムカついている様だ。

 さすがに佐藤でも、察する事ができる。なんとも解り易い話だ。


「………そんな事をされて、大神様のご機嫌を悪くさせておきながら、兄国を掬う様に丸ごと此処に持って来ようなどと………大神様がお許しになる訳がなかろう?」


「一悶着あるってヤツすね?」


 佐藤が見習いなものだから、地獄耳の今上帝を忘れて宮部に囁いた。


「一悶着どころではないぞ?」


 だから直ぐに今上帝が、佐藤に言った。


「………大地の大神様はお憤りとなると、火山を噴火させると聞き及びます」


 ………ゲッ!マジかー………


「地を揺らすのも、お得意である」


 ………ゲッゲッ!神ってヤバすぎ………


「………はぁ……天変地異だとか天災とか申す以前に、大地が揺れて火山が噴火するやもしれぬ………」


「どこですか?」


「はぁ?天の大神様が兄国に降臨しておるのだ、当然兄国であろう?」


 相変わらずの佐藤のKYぶりに、さすがの今上帝がちょっとキレ気味に言った。


 ………えーーーマジすかー?移転準備もまだなのに?………

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