大神

第72話

「まったくさ〜」


 長谷部さんの深刻な話しの後、宮部の寝殿で夕餉を………。とかいう事になって、ごく自然というか、此処では当然なのか、酒盛りが始まってしまった。

 諸福さんも根入さんも、佐藤のお気に入りのちょっと色付きご飯を食べずに、ガボガボ酒を飲んでいたけど、長い事此処に居るからか元々酒飲みなのか、長谷部さんはご飯に箸を付けずに、グイグイと盃を空けていく………。

 その相手をするのは、長谷部さんとシェアハウスを経験して、部下であり後輩でもある宮部で、とにかくご飯が気に入っているから、佐藤は食う方に専念。

 そんな長谷部さんが、かなり酔いも回って来た様子で、ちょっと目なんかも据わり始めてしまった。


「此処の大神様達って、マジで面倒だよなぁ〜」


 衝撃的な話しを聞いて、蒼白になったり愕然となったりした佐藤と違い、きっと長谷部さんはいろいろ取り乱す事を我慢していたんだろう。酒の勢いなんか手伝って、かなり不満を吐露し始めた。


「………いや、長谷部さん。声を抑えて」


 壁に耳あり障子に目あり………いやいや、神の耳は地獄耳〜的に気にして見せる宮部。


「いやいや………だってさー。此処には、大地の大神が在わすんだけどさー………日本の八百万の神々から、面倒くさがられて幽閉されちゃうんだぜ?


「あーーーはい。そうでしたね………」


 声を抑えようとしたら、余計に声を張られて、面倒っちぃのはどっちだの世界の宮部。


「………むふふ………だけでなくてさぁ……お隠れとなってる大神様達からも、ウザがられて此処を造って、此処に籠る事にしたんだってさー」


 ………ゲッ!やっぱそうなん?………


 佐藤が箸を止めて見つめると、宮部が何時もと同じく渋い顔を作って睨みつけてきたから、さっと視線をそらして美味そうな肉に………。


 ………えっ?なんの肉だ?………


 聞きたいけど、怖いからやめておく。どうせ食えば美味いんだ。


「そんでもって………天の大神が二人いるんだよ?


チョキを作って、ヘラヘラ笑う。


「………その様ですね?帝の祖神であられる天の大神様と、大地の大神様の対となられ、この星を護る天の大神様………」


「んーそうそう。なんか物凄く柔らかくて綺麗な物でできてて、それは美しい神様なんだと」


「えっ?マジっすか?」


「美神だって、嫉妬する程だって話しだけどねー」


「美神?美の神ビーナスっすか?それ以上に美しい神様?つーか女神様っすか?」


「違う違う。男神……お・と・こ!」


 長谷部は人差し指を立てて、絶妙に振って言った。

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