第69話
「大地の大神がお造りとなられた、二つの国を天秤として測る事………」
「天秤?」
「つまり比較する事だ」
「………比較?」
「この国は、かつては外界に通じ、地図にも載っている国として存在したんだが、ある時を境として、気配を消し外界を遮断して文明を持った………とはいっても、全て遮断しては外界の様子が解らないから、時を経て交流を持つ所を作り、外界の様子を伺いその外界の影響を受ける、もう一つの国日本を伺いながら、この国との比較をしているんだ」
「その比較とか天秤とか、どういう事なんです?」
「ああ……比較だよ。比較。天秤というのは、此処の人間……つまり今上帝が使う御言葉だ」
長谷部が宮部に言った。
「汚れを知らないこの国と、外界でどんどん汚れて行く日本とを、天秤に掛けるという意味合いだと思うんだが………」
「汚れた方が、重くなるという事ですか?」
「そうかもしれない………此処は大地の大神が存在するが為に、他の地上の国とは異なっている。地上の外界の国々と、同じ大地を共有しながらも、違う世界で存在している」
「異世界?」
「…………であり、同世界でもある。そんな世界だから、今上帝は天の大神の血を濃く受け継いでいる。だから大地の大神の命を、今上帝は全うできる。そして今上帝は天秤に掛けて、そろそろだと判断した様だ……」
「天変地異っすか?」
佐藤が弾けた様に聞くから、長谷部は静かに微笑んで首を振った。
「違う違う。そうなった時の為の、日本人を此処に受け入れる準備だよ。君達も此処に住み始めている訳だし、宮部君はもう長い事になるから、解っていると思うんだけど、此処の時間と外界との時間の流れがかなり違う。つまり此処より向こうの方が、時の経つのが早いと思うんだ。だから此処で準備を始めて、受け入れられる様になるというのは、かなり向こうでは時……というか年数が過ぎているという事になる。つまり私達の知り得る者達は、天寿を全うしているという事になる」
長谷部はそう言うと
「たぶん私の両親やきょうだい親戚や友人達は、良い歳を取って、天寿を全うしている。いやもはや甥や姪その子孫の代かもしれないな………」
と、ちょっと寂しげに言った。
「いえ。それなら、僕もそうだと思います」
宮部も、同じ表情を浮かべで言った。
「…………だからそんなに直ぐに、天変地異は起こらない。だが昨今の外界の状況はよろしくないから、早まる事があるかもしれない」
「早まったらどうなるんすか?」
「どうにもならないさ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます