第67話

………そんな帝が、召喚できるなんて………


 帝はいつも宮中の奥に居て、佐藤達と駄弁っているだけなのだ。

 だから佐藤は、帝は神の様に崇められて、神その物の様に尊ばれているが為に、人々が神獣を抱いていると思いたいのだと、そう思っているのだ。

 佐藤はとても失礼……不敬な事に、今上帝をそんな風に思っている。

 そして此処では、皇后とか中宮とかいわれている帝のお嫁さんは、神獣のらんとかいわれているけど、御簾………簾の高級版の奥に普段は居て、あんまり顔を帝以外の男子に見せる事は無いんだけれど、そこでも佐藤達日本人は特別扱いで、帝と一緒の時に御簾とか、几帳とかいう綺麗な刺繍とか施してある、高級感たっぷりの生地や布を垂らしている衝立とかを取っ払って、自ら声とか掛けてくれる事があるが超絶美女で、それでいてかなり気さくで、とても神獣とか鳥とか思えない。まぁあの美しさを、神懸かりとか〝神〟とかと云うのは、有りかもしれないし、そういう事で噂に尾鰭が付いたってヤツかもしれないけど、確かに帝同様に、外界世界の事をよく知っている………。


「………して、何ゆえの理由で、我々は此処に呼ばれているんです?」


 さすが宮部だ。唖然としている佐藤とは違って、要点を聞いている。


「………いずれ日本人を、此処へ呼び寄せる御心なのだ」


「日本人を此処へ?………中津國にでございますか?」


「うん」


 神妙に聞く宮部に対し、長谷部も真剣な表情を作って答えた。


「どうして?」


「…………いずれ外界では、大きな天変地異が起こる。それもかなりの大きさでだ………」


「えっ?」


 神妙に聞いていた宮部だけでなく、唖然としていた佐藤も長谷部を正視した。


「この国は、外界である日本と比べる国なんだ」


「日本と比べる?」


「………外界の汚染状態を此処と比べて、汚れれば浄化をする。それが今大地の大神が、この国に在わす理由だ。そしてその比べるべき日本から、人間を呼び寄せて、その汚れ具合を確認する。それがこの国の天子の役割だ」


「……………………」


「我々も充分知っている通り、地球の汚染状態や環境は良いとは言えない。主上はその汚れ具合を、呼び寄せた人間から測る能力を持って産まれる。ソレを持っている皇子ものが、此処の帝となる」


「えっ?つまり俺の汚れ具合で?」


 佐藤が、慌てふためく様に言った。


「まぁ………そんなとこかな?」


「えーーー」


 佐藤が、蒼顔を作って言った。


 …………マジかー?自分の汚れ具合で、天変地異とか起こるなんて、怖すぎだろ………


 さすがの佐藤も、愕然として突っ伏してしまった。


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