第66話
「マジっすか?なんか………何か理由も無く、呼ばれてる感あったんすよー」
佐藤が、感慨深げに言った。だってずっと、此処と繋がった聖域とやらで、今上帝と波長というヤツが合って、強制的に召喚されたものと思っていた。
………つまり理由とか、帝の深い考えなどとは関係無く、聖域の繋がりというヤツで、引っ張られる感じ?で此処に来てしまったのだと思っていた。
まさか此処の人々が言っている様に、ほんとうに帝が佐藤を呼んでいたとは……。
申し訳ないが、佐藤は此処中津國は、異世界………日本とは違う国というより、違う世界だと思っている。
確かに宮部が言う様に、此処に居て帝の側で働いていると、摩訶不思議な事が多過ぎる事を知った。
最初に吃驚させられた、牛や馬の糞やら尿を、ほぼ一瞬にして肥料と化してしまう微生物とか、めちゃくちゃ汚れを落とす石鹸が、驚くほどに自然に優しく海の生物の餌となり得る事や、大地の大神の大地で稲荷大明神に護られて育つ作物は、ほぼ一年中人々の為に実り豊かであったり、微かに四季が存在するものの、帝が統べり人々が暮らす地域には、温暖な気候で自然の恵みの雨が適量に降って、作物や生き物達を育んでいるとか、佐藤などが知らぬ程の大地が自然のまま存在して、そこには他の種族の生き物達が暮らしていて、そして全ての物には、数多の神が存在し護ってくれているらしいとか………。
残念ながら佐藤はそんな神々どころか、妖とか物の怪とかに遭った事はないけど、一年中青々と実る作物や、黄金色に輝く穀物を見る事はできたから、あの美味い飯の種類がいっぱいある事も知って、それら全てが佐藤の口に合う物等だ。
つまりそんな不思議で美味しい物や、便利な物を目にするから、何らかの不思議な作用で、佐藤は此処に来てしまったのだと思う様になったが、それは日本の聖地で、偶々此処の帝と波長が合ってしまい、そのスピチュアル的な何かで、地続きで繋がっている此処に迷い込んだ的な感じで、帝が意図して此処に召喚したとは思えないでいる。なぜなら初めて帝に会った時から、帝は佐藤より少し若くて、それは外界の事を知っていて、物凄く頭の良い人物ではあるけれども、宮部が言う様な能力者であったり、異能者である様な処は、ついぞ見せた事は無いからだ。
確かに若くて賢いから、ちょっと傲慢?的で我儘というのか、独裁的な処がなきにしも………だが、だからといって、奇跡とか神業的な技を使った事は無いし、その能力を持っているとも思えない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます