第63話

 此処の部署名って、かなり難しい。

 太古の日本の言葉を取り入れているそうで、ややこしくて覚えられないし、めちゃくちゃ部署があって、その下に課とか係みたいなのがあるから、覚えられない。

 それを覚える事を、何となく期待もされない佐藤だ。

 だけど物怖じせずに、忖度もなく今上帝に対するから、妙にお気に入りの中のお気に入りになってしまった。これってラッキーというべきなのだろか?

 そんな事を考えていると


「僕らの上司が、君に会いに来る事になった」


 と宮部が退所の時に、牛車に乗ると言った。


「えっ?上司って、宮部さんの世話係だった人?」


「そうそう………やっ実は佐藤君も来たし、挨拶もしないといけないと思ったんだが………連絡取れなくてさ……」


「………でも、宮中に居るはずなんすよね?」


「そうなんだけどね?なかなか会えないし、遣いをやっても居ないんだよ………」


「……………」


「実は君の前にやって来た日本人が、部署替えしたって密かに聞いているんだが、何処か地方に赴任させられたみたいなんだ」


「赴任?」


「あー。根入さんみたく、地方に行かされているんじゃないかって」


「転勤っすか?」


「まぁ………そんな感じ?」


「…………何処に?」


「それが解らないんだ。第一本来僕ら日本人は、今上帝の側に置かれる事が常なんだが………」


「?????」


「………っと言っても、ずっと僕らみたく、側でお世話をする訳じゃないけど、宮中には居る筈なんだ………本社勤務な訳よ」


「ああ!」


 理解不能な表情だった佐藤が、理解できた様に言った。


「………それなのに、地方勤務とは………」


「妙っすね」


「おかしいだろ?………で気になって、長谷部さん………先輩な」


「んで上司」


 佐藤が言うと


「そうそう」


 宮部が頷く。


「やっと返事が来たと思ったら、此処に来るって………」


「えっ?宮中に居るなら、宮中の方が早くないっすか?」


「…………そうなんだが………第一僕ら日本人は、そんなに忙しくないはずなんだ。今まで会えない程忙しいなんて?………何か……ある……?」


「マジで?」


「………うん………」


 シェア屋敷に着くと、もう慣れたので、渡り廊下を歩いて佐藤の対屋で、宮部と別れて中に入ると、直ぐに明里さんの足音が聞こえて来る。

 たぶん着替えをする為に、新しい着物を持って来ているのだろう。

 此処の洗濯って、めちゃ凄い。毎日何人かのメイドさんが、洗濯してくれるのだけど、石鹸より汚れが落ちて匂いがよくて、それでいて自然に優しい物で、川や海を汚さないだけではなくて、プランクトン達の餌になる物を使っている。

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