第61話
つまり独裁者である今上帝が、お気に入りなのでこの格好なのか………。
佐藤は理由が解ったので、郷に入れば郷に従え………いい言葉だ。
全てを解決させる言葉だと知った。
そんなちょっと、今上帝のワンマン振りなども垣間見つつ、今上帝との謁見が暫く続いた。そうしていく内に、流石に鈍臭い佐藤ですら、今上帝と直に顔を見て話しをするなど、あり得ない事だと解って来た。
佐藤は宮部と一緒に、今上帝の側に置かれて、お世話をする係となったからで、大会社の社長の秘書的な役割をする蔵人という官人は、今上帝の身の周りのお世話……お茶出しとか食事の手配とか、スケジュール管理とか、偉い大臣とかのアポの確認とか、それどころか伝達とかする………その伝達って、言付ける的な事ではなくて、ガチで今上帝の言葉をそのまま伝達する。
マジで、見ててよく解らない。簾の奥に今上帝が居て、その簾越しに臣下と話しをするのだが、その臣下の相手によっては、直に声を掛けるのではなく、一旦蔵人が間に入って言葉を伝える………なんか夫婦喧嘩して、母親が子供の佐藤に、父にこう伝えろ………と言っていた時みたいな?それとはちょっと違うけど、佐藤は最初にその光景が頭に浮かんでしまった。
そんなこんなを見聞きしている内にある、宮部が言っていた様に、少しずつ此処の事が解り始めた頃、佐藤は宮部の配下として、今上帝付きの官人として辞令を受けた。
つまり、今上帝直属の部署に配属されたのだが、蔵人所の蔵人では無くて、それに準ずる何とかかんとか………此処の言葉はむずくて覚えられない。
蔵人という官人とは、全然色の違う官服を着て、蔵人と同じ様に今上帝のお世話をする。ちょっと違うといえば、今上帝はえらく佐藤達日本人に、気軽に話しかけ答えを求めるから、たぶん他の官人達よりも、ラフな感じの主従関係???なのだろう?
そんな此処で生きて行く術が、今上帝によって決められ、居心地の良さと待遇の良さで、此処の暮らしも悪くないかも?と思い出した頃、根入さんと諸福さんが、宮部とシェアする佐藤の屋敷にやって来た。
「え〜!根入さん達まだ居たんすか?」
幾ら此処の人達がのんびりしているとはいえ、日本からやって来た〝客人〟佐藤を、連れて来ただけの二人がまだ都に居たとは、時間に追われ時間に正確な日本で育った佐藤には吃驚だ。
「まだ居たのかとは、何とも寂しい物言いでございますな………」
諸福さんと根入さんは、めちゃ寂しそうな顔を作って言ったから、佐藤は流石に申し訳ない気持ちになった。
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