出仕
第58話
翌日物凄く早く、屋敷のあちこちにで戸が開けられる音がする。
此処の屋敷にも、雨戸ってあるのか?
とか思っていると、簾の高級版的なヤツの外から、明里さんが声をかけて来た。
案の定というか此処では当然なのか、明里さんの他にも女子がいて、盆に洗面器等を乗せている。朝の洗顔タイムだ。
「此所って洗面所は、無いんすか?」
白張姿の佐藤が言うと、明里さんを筆頭に皆んなが怪訝な顔を作った。
顔を洗って歯磨きを済ませると、朝食が運ばれて来る。
「えっ?宮部さん達は?」
「殿は寝殿で、朝餉をお取りです」
「あさげ?」
なんかの商品名みたいだ。
「一緒に食べないんすか?」
「お支度がございますから………」
「あーーー」
ペラペラ着物姿の宮部を想像して、仕方ないので脚付き盆の前に座る。
佐藤の部屋もフローリングにベッドだったから、別段不便とか不服はないんだが、部屋が広いからポツンと感が半端ない。
此所の貴族って、案外寂しい暮らしだな………なんて思うが、朝の玉子粥は美味かった。
玉子粥は、病気になるとよく母親が作ってくれたが、全然それより美味かった。どうして此所の食べ物は、こんなに美味いんだ?
朝から粥のお代わりを三杯して、メイドさん達を吃驚させた佐藤は、明里さんに促されて、参内の支度に取り掛かる。
着物なんて着れないから、明里さんの言うがままにするしかないが、やっぱり恥ずいから今日は、白張の上に着付けてもらう事にしたが、明里さんは宮部に叱られないかとビクビクだ。
そんな事言ったって、恥ずいものは恥ずいし、慣れるまで仕方ないだろうと、ソコは宮部に言い張るつもりだ。何せ此所に来たばかりの宮部を、知っている延登子さんが居るんだ。佐藤の気持ちは、汲んでくれるはず………。
そんな事を考えていたら、支度が済んだようだ。
「あれ?」
宮部と同じ色のユニフォーム?着物だ。
「おっ!上出来上出来」
宮部が、寝殿からやって来て言った。
「日本人は、この色の官服なんだ」
「かんふく?」
「………此所は一目で官位が解る様に、官人が着る
「学生服でネクタイで、学年を分ける的な?」
「んーーーかなり意味合いは違うが、まっそんな感じか。それと僕らは冠を免除されてる」
「かんむり?」
「ほら、此所の男達って、頭に被ってるだろ?」
「あ〜帽子……」
「此所の男子は、髪の毛を少し伸ばして髷を結うんだ」
「まげ?お相撲さんの?」
「ああ、それとはちょっと違って、この辺迄伸ばしてキュッと持ち上げて、頭のてっぺんで一つに結ぶんだ」
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