第54話

「此処の人達って、よく神様からの賜り物とか、授け物とか言うだろ?アレって、そういうタイミングで、口にできる物って意味だと思うんだ」


「はぁ………」


「ただ料理人だって、気を付けてくれているから、早々僕らの口に入る事は無いし、農家の人だって収穫の時に気を付けてくれる、それでもそんな事があったら、神様の賜り物という事になる………」


「神様の賜り物は、なんでも食うと聞いたんすけど………?」


「うん。そんな理由で何でも食う………僕は食えない物あるけどね」


「でも、家畜のような物は無いんすよね」


「無いね。全て自然界で生きている物達だよ?」


「………じゃ、猟師とかが仕留めるんすか?」


「ああ………神様が赦した物を、仕留めるんだ」


「それって、誰が赦すんす?神主さんとかお坊さんとか?」


「まさか」


 宮部は、頓狂な声を発して笑った。


「本当に神様が赦すんだ。………そのモノは、神に仕える様になったから、殻を其方達に授けよう………って………」


「はぁ?まさか………」


「佐藤君も、今上帝と狩に行けば解る様になる。此処の者達は、無闇な殺生はしない。そのかわり賜った物は、何でも食う」


「………………」


「想像は、しない方がいいぞ」


 宮部はニヤリニヤリと笑って、小皿に箸を付けた。


「あーーーこの肉は………」


「宮部さん、言わないでください」


「えっ?何で?」


「食えなくなりそう………」


「はは………大丈夫。これは牛の肉」


「えっ牛?」


 またまた想像してしまった。

 牛車を轢いてた牛の事………。


「どっかの神様の、遣いめとなるらしいよ?」


「遣いめ?」


「使いっぱ。神様は動物を、パシリとして使うんだ。その使いっぱが、認められると眷属神とかいう、一応の神になるらしい………でその使いっぱは、神様程長生きできない。神様も上級になる程長生きらしく、パシリは神様から比べれば短命な訳よ。それで補充するんだが、やっぱり徳とかそんなのが必要なんだろ?神様が気に入ったものを仕えさせるけど、その時には器というか体というか………それが必要無くなる。ところがその器=体って生き物の糧になるから、それを食えばいいだろ?って事で神様がくれる。神様に気に入られた程のものの器だから、上等品って事な訳さ」


「そんなのが、いっぱいいる訳すか?」


「此処は神様が、いっぱい居るからね。というか此処の人達は、僕達が居た世界みたいに、肉とかをそんなに食わないよ」


「何でも食うって?」


「だから何でも食うのさ」


「へっ?」


「デカイ鬼ですら食う所だよ」







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