第50話

「………とは言っても、此処も下で働く者は忙しくしてる。或る家に仕える者は、ずっと仕える感じなんだが、特に能力者の帝が誕生すると、寵を得る官人が変わる事があるから、その時にいろいろと入れ替わる事があるそうだ」


「………ってその帝が代ったら、俺達ってどうなるんす?」


「………さぁ……此処の官職って、帝一代限りの官職らしいからなぁ……」


「どういう事っす?」


「あ……一代毎の契約的な………と言っても、上級の貴族とかは残されたり?解雇とか左遷されたり?会社の社長が代ったら、重役が変更されるみたいな?大体下級の者は変わらない的な?」


「あーーー」


 日本ぽくて、理解しやすい部分もあるんだ?


「或る家に仕える者は、ずっと仕える的なのは、奴隷みたいな感じすか?」


「ああ違う違う。違うんだが、代々その家の使用人として、働く者が多いらしい………代々長く働く使用人が多いという事は、其処の主人の人徳があるという事だから、貴族の格が上がる訳だ。ステータス的な?」


「ああ。虐めとか酷使とかが無い、ホワイトな感じ?」


「そうそう………下の者に慕われてこその貴族……って感じだからね。情報通の今上帝の、心証なんかも良くなる訳さ………」


「ああ……帝が一番の権力者すもんね………」


「………そんな帝の寵を、一番得られるのが僕ら日本人って事だ」


 宮部はニヤリと笑うと


「とにかく、風呂に入ってサッパリしてくれ。明日も参内しなくちゃいけない………」


「あーはい」


「風呂に入ったら、此処で夕食を一緒に食べよう」


「此処っすか?」


「うん。女房にいろいろ聞いてくれ」


「えっ?宮部さんの奥さん?………いやぁ、奥さんにいろいろ手間を取らせて、申し訳ないっす………」


 恐縮しきりな佐藤だ。


「ああ違う違う。妻ではない。女房………此処では女性の使用人の事だ」


「女性の使用人?」


「特別枠な僕らは、使用人がいるんだよ」


「ええ?〝僕ら〟って、俺もっすか?」


「うん。暫く佐藤君は此処に居るから、僕とシェアする感じだけどね」


「マジすか?」


 とか唖然としていると、めちゃくちゃ可愛い女性がやって来た。


「えっ?にょうぼうさんすか?」


「明里と申します」


「あけさとさん?」


「暫く佐藤君の、身の回りの世話をしてもらう事にしたから」


「え〜マジっすか?」


 ちょっと小柄だけど、超可愛い。

 こんな可愛い女房さんに、身の回りの世話をしてもらえるなんて、食事が美味い事よりも、此処に居るのはいいかもしれないと、佐藤は密かに密かに思ってしまった。

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