第49話
「旨い話しには裏があるって………」
佐藤が言いながら中に入ると、だだ広いフローリングの部屋に、パーテーションが置かれて、広い部屋を仕切っている。そして見慣れた畳があって、その上に平べったい座布団が………なるほど、コレが江戸時代になると、全面に畳が敷かれて、和室が個別に作られる訳か?
佐藤がよく知る障子とか襖で仕切られて、個室的な感じになる訳だ。そうなると、部屋の広さは狭くなるけど、密談とかにはそっちの方がいいな。
「まっ確かに旨い話しには裏がある………今上帝が何を考えて、特別待遇にするかは解らないから、確かにヤバいかもな………」
宮部はそう言いながら、奥の一段高い所に置いてある、畳の上に座らないで、一段下のフローリングに直に座りながら言った。
「え〜マジすか?」
佐藤も、宮部の横に腰を落とす。
「いくら待遇がいいとか言われても、ヤバそうな所はヤダなぁ………ってか、マジで帰してもらえないんすか?」
異世界ライフを、リアルに体験する事になろうとは………。
化学にも歴史にも数学にも秀でていないのに、どうやって生き延びろと?
「うん無理だな。先に来てた僕が言うんだから、間違いない」
「はぁ………宮部さんは……スマホを知らない、ガラケー時代の人だから………十年くらい前から、来てるって事すよね………それ以上前って事も有りか?」
「有りだなぁ………ただ、此処の時間の流れがどんなかは、ちょっと不明で………つまり年号とか、元号とかが無いんだ」
「えっ?」
「此処に何年居て、それが日本の何年になるか?だな……」
此処に馴染んでしまったからか、原来の性分なのか、宮部は他人事の様に言った。
「………ほら、日本昔ばなしの浦島太郎みたいな?」
「あーーー玉手箱開けると、中から白い煙が………」
「すると白髪のお爺さん………みたいな?」
戯ける様に言うけど、意外と目が真剣だ。
「………じゃ、宮部さんは、西暦何年に此処に?俺2022年の………あれ?」
「………此処に居るとそういった事、忘れちゃうんだよねー」
「…………マジっすか?」
「うん。それは、此処と日本の時間の流れの違いの所為だと、僕は勝手に思ってるんだけどね」
諦め感を精一杯醸し出して、宮部は言った。
「一応此処の時間というのはあって、出仕する時刻とかあるんだけど、そんなに日本みたく厳しくないんだ。仕事というかやる事はあるから、それを熟さないと帰れないけど、時間に追われる感は無いね」
「気楽な感じすね」
「まぁ気楽かな………」
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