第44話

 それからもいろいろと、佐藤より若くしか見えない帝は質問して来るけど、それが恐ろしくいろんな事を知っていて、それを佐藤がどう思う?とか、時たま宮部にも質問したりして、余りに本当に日本の事を知っているから、それこそ佐藤の方が答えられない事が多かったりした。

 そんな質問に、あたふたと答えている内に時間は経っていて、さっき連れて来てくれた官人がやって来て、帝に物静かに近寄ると耳打ちをした。すると帝は大きく頷いて


「楽しく話しておったら、時が経ってしまった様だ………佐藤も疲れておるだろう、宮部と共に下がって休むがよい」


 と言って立ち上がった。

 すると宮部がひれ伏したので、佐藤も同じ様に頭を下げた。


「また明日参れよ」


 そう言い残すと、パーテーションの奥に姿を消してしまった。


「………世話係殿、客人様………」


 さっきの官人が、宮部に向かって言った。


「暫くは、世話係殿の屋敷にお出で下さい。後ほど、お役を賜るかと存じます」


 官人が言うか否か、宮部は大きく頷いて佐藤を見た。


「さように申し付け賜り、屋敷も新たに賜りました」


「ああ、さようでございますか……」


 官人はそう言うと、部屋の外の廊下まで見送りに来てくれた。


「それでは失礼致します」


 互いに深々と、頭を下げて挨拶する。


「佐藤君は、暫く私の所に居候だ」


「居候?シェアハウス的な?」


「確か日本で今流行ってるんだっけ?」


「シェアハウスしてる友達いますよ」


「ふ〜ん?いろいろ変わってるんだね」


 宮部は、感慨深そうに言った。

 ………そうだ宮部は、スマホを知らない時代に此処に来た様だから、 ちょっと年上かと思っていたけど、かなり年上なのかもしれない………が、此処の時の流れ方が日本とは違うから、見た目は本当に大して変わらない様にしか見えない。

 大きな建物を見ながら、大きな門を通って、砂利の敷かれた所を歩いて行く。来た時には、そんなに人の姿は見えなかったけど、今は交代の時間帯なのだろうか、いろんな所に宮部と色違いの服装の人達が、かなり好奇の目でこちらを見ている。

 ………ああ、佐藤の着の身着のままの、きっと少し臭う服装が珍しいのだろう。


「そういえば、根入さんと諸福さんには会えなかった」


「都を発つ前に会えるさ」


「彼らも、帝に会えると感動していたけど………会えたかなぁ?」


「労いの謁見はしていると思うよ」


「労いすか?」


「客人というのは、かなり重要な存在の様でね、この国ではあり得ない待遇を受けるんだ。例えば今みたいに、直接帝に会える」

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