第42話

「千葉県とな?宮部は何処であったか?」


「神奈川県でございます」


「神奈川?横浜っすね?千葉よりオシャレな港町………」


 佐藤が言ったから、宮部は顔をしかめて佐藤を睨め付けた。


「ほう?其方も港町であるのか?」


 帝が、興味津々で聞いてくる。


「いえ。東京に近い方なので、港町ではないです」


「………因みに、私も港町ではございません」


「えっ?じゃ何処?」


 佐藤が喰らい付くから、宮部は一層不快な表情を作った。


「川崎です」


「川崎大師の?」


「………いや佐藤君、私の事は後で!」


 ピシャリと、不機嫌そうに言われてしまった。


「………宮部。叱るでない。実に面白い男であるな」


 宮部はかなり不満顔だが、帝は好意的に捉えてくれている様だ。


「………して、千葉県で何をしておった?」


「………千葉県には住んでました」


「住む?」


「あーーー実家に両親と………」


「ほう?父御と母御とか?」


「はい………まだ親の脛嚙りの、大学生っす……」


「ほう……学生がくしょうであるか?」


「がくしょう???学生です」


 佐藤が答える度に、宮部は顔を顰めている。

 ちょっとヤな感じだ。


「………して、何を専攻しておるのだ?」


「専攻?……いや〜そんな大層な大学では………経済学部で経済を……」


 へへへ………と笑うと、宮部はかなり冷めた顔容を向けて来る。


「経済学部であるか?経済には長けておるのか?」


「あーーーさほどでは………アレがしたいとか、コレがしたいとか、そういうのがなくて………」


「………さようか………」


 帝は佐藤を、マジマジと見つめると


「………で、昨今では何が流行っておる?」


 と聞いてくる。


「流行り……っすか?つい最近まで、あるウィルス性の病気が流行ってました」


「ほお?其は終息致したか?」


「終息はしてませんが、落ち着かせるしかない………みたいな………」


「ふむ。で其方は患うたか?」


「いえ。全然平気でした。友達や家族も罹ったんすけど、全然大丈夫でした」


「………であろうな。其方は驚く程に頑丈だ」


「えっ?」


「身も心も頑丈である。ウィルスとやらが、太刀打ちできぬと、避けて通るタイプであるな」


 帝は、声を上げて笑って言った。すると今まで、渋い顔を作っていた宮部が、肩を小刻みに震わせている。


「えっ?ここで笑う?」


 佐藤は合点がいかないと、宮部を凝視した。


「コレが、スマホとやらか?」


 えっと帝を見ると、すっかり忘れていたが、携帯が失くなってたんだった。異世界だから通じないと思って、気にしてなかったけど………そんな携帯が帝の側に、黒い木箱に入って置かれてあった。

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