第41話

 そんな訳あり廊下を、たぶん日本の本家本元より、良い音色で鳴り響く廊下を、不謹慎にも笑いながら歩いていると


「お世話役殿………こちらに」


 突き当たった所で、宮部と色違いの服装の男が言った。

 アレ?この男は、諸福さんや根入さんの様に、ちょっと変な帽子を被ってる………っていうかそう言えば、門番達も街の男達も、形が違うが被ってた様な気がする。まっ帽子も含めた、ユニフォームなんだと思えばいいんだ。

 そうだそうだ。警察官だって自衛隊だって、駅員さんだって正装の時には帽子被ってるもんな………。


「主上は、お出ましでございますか?」


「いたくお楽しみと、なられておいでにございます」


 男はそう言うと、チラリと佐藤を見て会釈したから、佐藤も会釈する。


「此処では帝に会うには、官位という物が必要で、その官位と帝の許可がいるんだが、客人という事となると、そこで官位より先に帝の許可が発生し、その為に必要とされる官位を与えられるんだ」


「へっ?」


「解り易く後で説明するけど、先ずはお会いしたらその礼をする」


「解った」


「それと、帝と直々に会えるのは客人の内だから、そう心得ておいた方がいい」


「客人の内?……っていうか、家に帰してもらえるんすよね?」


「ああ言い忘れてた。帰る事は、余り期待しない方がいい」


「えっ?」


「僕らは、今上帝の側に置かれるんだ」


「ええ???」


「それも後で解る様に説明するから、とにかく謁見したら、聞かれた事だけに答えるんだ。後は後で………」


 ………ダジャレかよ………


 とか思いながら、色違いユニフォーム男の後に従う。たぶんこの男も官人だ。

 男に促されて、簾の物凄く高級版みたいなヤツを潜って、中に入って行くと一段も二段も高くなってる所に、諸福さんや根入さんが敷いていた、畳よりも綺麗な縁取りの畳の上に、やっぱり二人が敷いていた座布団より、かなり厚めの座布団に座った、宮部達とはまた違う格好をした、佐藤よりちょっと若めな男が、瞳を爛々と輝かせて佐藤を見つめていた。


「よくぞ参られた」


 若い帝は、佐藤を見下ろして言う。


「あーーー日本人の佐藤光輝です」


 佐藤は宮部に従って、帝よりずっと離れたフローリングの床に、平伏す様にしながら言った。


「おっ!兄国から参られたか?それは大義」


「あーーーとんでもないです」


「………で?何処から参られたのか?」


「何処から?」


「日本の何処か?と言う事だ」


 宮部が佐藤を、チラッと見て小声で言った。


「ああ。千葉県です………かなり東京寄りの、千葉県………」

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