第38話

「日本の状況すか?」


 佐藤が、頓狂な声を発した。


「………そんな、俺なんか日本の政治についてなんか、何も解りませんよぉ………」


「はは……そう言った事は、俺らより理解してるっていうか………情報は凄い量で入ってるぽいんだ。そういうのじゃなくて、今の若い世代が感じてる事とか、流行ってる事とか?」


「………って言うか、宮部さんから情報を得ているでしょう?それから、大勢まろうどさまが来てるって………」


「はは……何時の事を言っているんだか……」


 宮部は、呆れた様子で笑った。


「此処の時間の流れと、日本の時間の流れが、かなり違うらしいんだ」


「へっ?」


「………だから此処の人々は、ゆっくりのんびり、過ごしていられるんだろうなぁ………」


「………どういう事っす?」


「ああ。僕が此処に来たのは、かなり前の話しなんだが、此処の人々にとっては、つい最近の事なんだ。僕はたぶん君よりかなり年上なんだが、そう大して変わらないようだろ?」


 言っている意味が解らない佐藤は、うんうんと頷く事しかできない。


「つまりのんびりと過ごしても、時が経つのが遅いから、そんなに慌てる必要が無い」


「えっ?でも朝も昼も夜も……時間が経つのが、物凄く遅く感じないすよ?」


「………そこなんだよ。僕も此処へ来た当初は、日本と同じ時間を過ごした感覚だったんだけど、此処に慣れるにつれて、だんだん違う様に思う様になったんだ。つまり此処は、僕達が住んでた日本が存在する、その世界とは違う世界なんだと思う」


「異世界かぁ?」


「………ところが、此処が地の大神が造った、日本と同じ地であるからか、或る地を兄国である日本と、共有している場所が何ヶ所か在る為に、日本と同じ感覚もあるんだ。だから異世界っと言っても、当たらずとも遠からず………みたいな………」


「え〜〜〜」


 佐藤にはよく解らない。思考が止まってしまう。


「………つまり、此処に在る土地が、日本にも在るって事すよね?そこから俺は来た」


 ………合ってます?………的に視線を送ると、宮部は重々しく頷いた。


「それは全部が在る訳じゃなくて、点々と在るんすね?」


「そうそう。日本における聖域、または聖地とか霊地とか言われてる」


 宮部は、案外理解力が無さそうな、佐藤が理解しているから、とても嬉しそうに言った。


「あーーー例えば、出雲大社とか伊勢神宮とか?」


「富士山とか霊山とか………」


 えっ?という佐藤の表情に、そこまでは理解していないか……感が否めない。

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