第32話
「此処はかなり、賑わってるでしょ?」
宮部は小さな窓みたいな所から、外の様子を見ながら言った。
「温泉街も湖も人の多い所だったけど、やっぱ都会っすね?」
「都会?………ああ………懐かしい響きだなぁ………」
宮部は薄っすらと笑みを浮かべて、窓から外を見つめて言った。
「此処は古の日本を模している所なんだけど、そのままこの国特有の文化を辿ってるからね。日本の様で日本じゃない……というか、日本のある時期の特徴を残しつつ、独特な文化を持ち人々の生活は豊かで、こんな感じなのに、案外近代的な所もあったりする」
「近代的っすかぁ?」
車や耕運機も無いのに?
「牛に轢かせてるのに……って顔だね?」
「牛に馬っすからね」
佐藤が言うと、宮部はまた少しだけ笑った。
「………実に面白い……というか不思議な国だ」
「やっぱ異世界じゃ無くて、〝国〟なんすね……」
「異世界?」
佐藤の落胆ぶりに、宮部が怪訝そうに見つめる。
「日本で異世界転生物が、流行ってんす」
「異世界転生モノ?漫画かい?」
宮部は知らないらしくて、呆れ顔を作って言った。
「………まぁ………」
「ふ〜ん?異世界か………まっ、当たらずとも遠からず………此処は日本によく似た国なんだが、ある時代から異なる歴史を経ているんだ」
「大地の大神様が、在わすか否かの違いっすよね?」
「大地の大神の存在を、知っているのか?」
「………はぁ………諸福さんから聞きまして」
あれ?根入さんだったけか?
……まっ、どっちでもいいか……
「じゃ、説明しやすいや。此処は大地の大神が、大地を造ってそれを天の大神に譲って、その子孫がその大地に国を造り、その国を統べらせたんだけど、その前に日本の大地を造って、その大地に天の大神の子孫が国を造り、統べる様になっていたからそうさせたみたいなんだ。つまり先に誕生した日本を、此処の国の人達は〝兄国〟と呼び、後から誕生した此処は、その兄国に倣って歴史を刻み文化を持った。だがある時代から、その兄国である日本の文化を取り入れなくなった」
「えっ?なぜっすか?」
「う〜ん………これは、機密事項なんだと思う」
「機密事項?」
蜜なる言葉に、佐藤が喰らいつく。
「本当に不思議というか面白いんだが、この国の帝は神獣を抱けるんだ」
「諸福さんも言ってたけど、その抱けるってどういう事っす?神獣を操れる的な?」
異世界ぽくて、わくわく感が止まらない。
「………いや、どちらかといえば、彼らは能力者だよ」
「能力者?」
異世界、異能力者、まじかー。
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