第31話
大きな建物に入ってテクテク……テクテク……
鈴を鳴らしてテクテク……テクテク……
馬に揺られてテクテク……テクテク……
な〜にも無い所を、ひたすらテクテク……テクテク……
馬のオシッコのタイミングもあるし、腹拵えの都合もあるし………なんて、何も無い所をテクテクするから、そんな事の心配をしていると、一際輝いているゲートが目に入った。
「着きましたぞ」
「都でございます」
「!!!!!」
諸福さんと根入さんが、佐藤を見て言うから、佐藤は二人を凝視してしまった。
………ハ・ヤ!………
駅路を使わなければ三ケ月程かかるとか、途中下車的な温泉街とか、湖の美味しい物とか……そんな所に寄って来たけど、もしかしたらそんなの吹っ飛ばしてたら、馬のオシッコの時間ギリ迄に、到着するのが駅路なのか?
高速道路より速い
………と言うか、やっぱ異世界じゃん。
ニコニコ笑顔の官人二人を、ただただ呆れ顔の佐藤が目で追っていると、馬は使用人に連れられて、一際大きくて立派な駅のピカピカな床をカポカポ歩く。
「お疲れ様でした。お出でませ」
とか、今迄意外と無愛想だった門番達が、妙に明るくて親しみを持って迎えてくれる。
そんな門番達の見送りを受けて、駅の外に出ると
「ご苦労様でございました」
今迄見て来た農家の人とか、食堂の店員さんとか、市場や街で見かけた人々とは、ちょっと違う格好をした人達が出迎えてくれた。
………ん?そう言えば、今日着ている諸福さんや根入さん達とは色違いだけど、かなり似た感じの服装だ。
昨日迄の二人の服装とは、ちょっと違うと思ったけど、大都会の宮殿に行くのに、おめかししていると思っていた。
背広とかタキシード的な?
どうせ佐藤は、着替えさせてもらえないし………。
「私は〝客人お世話係〟の、宮部と申します」
鮮やかな色の服装の宮部が、丁寧に頭を下げて挨拶したから、佐藤も頭を下げて
「佐藤光輝です」
と言った。
「あーやはり、日本人ですね?」
宮部はとても嬉しそうにそう言って、佐藤の手を取った。
「私も日本人なんですよ」
「えーーー?」
吃驚仰天の佐藤に
「これから貴方のお世話をするので、上手く馴染んでくださいね」
何だか物凄〜く、意味有りげに言われた。
「…………先ずは、お疲れ様でございます」
宮部に促されて、待っていた牛車に宮部と乗ると、宮部は深々く頭をまた下げた。
「いえ…………」
佐藤は恐縮して見せる。
「………ところで、根入さん達は?」
「別の牛車で参内します」
「あーーーー」
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