第28話

 日本の竪穴住居をモチーフに、建築家が建てたってヤツだろうか?

 案の定入り口は狭くて、中に入ると驚くほどに広くて、土の上にテーブルが置いてあって、それに合わせた椅子もあって、所々に窓が開けてあって、燭台みたいなのもあるけど、今は明るくて付いていない。外観は佐藤の知っているアレだけど、内装は小洒落た感じで、何だろう?廃校とか廃墟となった、倉庫やビルをリニューアルした感じかな?アレを、現代風にオシャレにした感じ………そうそうここの建物って、みんなそんな感じで、市場とか街並みもそんな感じだった。


「いらっしゃいませ」


 もはや見慣れた格好の店員さんが、テーブルに座った一同に言った。


「アレを………」


 お品書きを指して諸福さんが言うと、店員さんは頷いて、使用人達が座るテーブルに移動した。


「この建物って、根入さん達とは違う建物っすね?」


「ああ。本来ならこの建物が、一番住み易いのですが、何せ大勢の使用人を抱える様になると、これでは手狭となりまして………」


「官人になると、使用人が付くんですか?」


「官人と申しましても、官位がございまして……その官位によって、使用人も変わります」


「使用人って、諸福さんが雇っているんっすか?」


「………ああ。代々我が家に仕えてくれている者もおりますれば、官位が上がる毎に遣わされる者もございます」


「?????」


「………ああ。国司には国司付きの使用人が、あてがわれるのです」


「へぇ〜」


「その者達は、国司の仕事において手助けをする者で、今ここに居るのは、我が家に代々支えてくれている者達で、一族の様な者ですなぁ」


「なるほど………」


 ………だから気が効く使用人は、根入さんの先の先まで想定して行動してるんだな………

 とか関心していると、大きな椀に入った食事が、店員さんによって運ばれて来た。


「ええ?マジで?」

 

 思わず佐藤は、声を上げてしまった。

 だって凄く見慣れた、それこそ日本人の大好物、鰻丼が目の前に置かれている。


「ここの、名産物でございます」


「うわー。マジっすか?」


 思わず興奮気味の佐藤は、勢いよく箸を持って一口口に入れる。


「う・ま!」


 日本でもそうそう食せる物じゃないが、それにしては美味すぎる。

 ………っていうか、コレって天然物?………


「コレって天然物っすか?」


「天然物?」


「あーーー養殖じゃないっすよね」


「養殖?」


「あーーーあーーー自然に泳いでいるヤツ?」


「そこの湖で、獲った物ですよ」


 佐藤の会話に、店員さんが答えた。

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