第27話
駅を出ると湖だ。
えっ?マジでこれ湖?海じゃなくて?
………なんかデジャブな感じだ……こんな感想、日本でもした事あるぞ?………
確かに湖って大きいから、見た目じゃ分からない時がある。
「遊覧船とかないんすか?」
「はい?」
諸福さんが、佐藤の不意打ち質問に、困惑顔を浮かべた。こんな質問して、迷惑顔しないのだから、ほんと諸福さんは好い人だ。
「湖を一周する船っす、船。帆をいっぱい張って……海賊船みたいのとか、白鳥とか?」
「?????」
ますます、困惑気味になっていく………。
「船ならありますが……乗りたいですか?」
横で聞いていた、根入さんが言った。
「乗りたいです」
顔を明るくして答えた佐藤とは反して、使用人を含めた一同の表情は堅い。
それでも気の利く根入さんの使用人は、慌てて何処かに走って行った。
「この湖は、かなりの名所でして……船に乗ったら、名物を食べに参りましょう」
ちょっとテンション下げ気味の一行の中で、根入さんは明るく振舞って言っている。
「………なんか……皆さん、テンション下げ気味っすね?」
「………ははは………船に乗るのは、余り好ましくないのでございます」
「えっ?なんで?」
「今日は、水難の日なのです」
「水難?」
「今朝の占いが、駅に貼られてありましたでしょう?」
「えーーー」
………そんなの知らない!第一旅に出て、街中で見かける字は漢字だったり、カタカナだったりしてるけど、なんだか年賀状の達筆なおじさんの字みたくて、よくよく見ても解らない物が多いし、漢字もごちゃごちゃしてて、読み辛いというかよく解らない。だから佐藤は、あんまり読んでいない。
……っていうか、そんな占いを、顔色変えるくらいに信じてるのか?………
唖然の佐藤だ。
「陰陽師の占いは、当たるのです」
諸福さんが、大真面目に言った。
………っと言うわけで、今日は船は出航しないのだそうだ。
「マジか………」
テレビで占いを見ても、大して当たった試しのない佐藤は、大真面目なここの風習に呆れてしまうが、他の一行はホッとしたのか、テンションが戻っている。
「………それより、予約を入れて参りましたゆえ、食事処に参りましょう」
陽の光に輝く広い湖を見渡しながら、暫く歩いて行くと、小さな家?みたいなのがポツポツと建っている。
その一つの入り口に立った。
………ん?この家………修学旅行?いや社会科見学?郊外学習?的な何かで見た事ある、竪穴住居に似てる感じ。アレより全然洒落てるけど………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます