第26話

「明日はちょっと寄り道を致し、名産物を食しに参りましょう?」


「そうそう……湖の側で一泊致してから、都入りと致しましょう」


 ちょっと硬めのご飯より、酒を飲みながら根入さんと諸福さんは言った。


「湖すか?」


「さようで……そこで獲れる美味い物があるのです」


「さようさよう………」


「えっ?楽しみだなぁ……ここの料理は美味いですから」


 佐藤がそう言った時に、宿の者が入り口で使用人に、新しい料理を差し入れて来た。


「えっ?天ぷらだ」


「佐藤様、ご存知でございますか?」


「知ってます。天ぷらは日本食ですよ?」


「さようで?我らも、昔から食しておりますぞ?」


「えっ?マジっすか?」


「いやいや、ここは古の日本文化に、影響をされておりますからなぁ、日本から渡来した物やもしれませぬな………」


「………………」


 天ぷらは、日本と同じで天汁を付けて食べたが、ちゃんと塩も乗っていて、それも実に美味しかったし、日本で食べた天ぷらと同じだった。そして母親が作る天ぷらより美味かった。

 料理が全て揃い、佐藤達がのんびりと食事をしていると、入り口の方で使用人達も、少し違うけど大して変わらない食事をしていた。

 ただ彼らは、主人である二人よりも早く済ませて、後片付けをしたり寝る準備をしたりして、寝るのもずっと後だった。

 畳の上に薄い布団を敷いて、根入さんと諸福さんと佐藤は寝たが、入り口の側で寝る使用人達は、フローリングに直に薄い布団を敷いて、佐藤達との間には、大きな衝立を二脚立てていた。そして朝は、佐藤達よりも早く起きて、佐藤が初め吃驚した様に、木の桶を持って来て洗面を手伝った。


「佐藤様の所では、この様な習慣はないので?」


 今日も戸惑いを見せる佐藤に、根入さんが聞いた。


「洗面は自分でやります………というか、着替えも自分でやりますし、掃除洗濯料理も……親元を離れれば、全部自分でやります」


「さようで?」


「あーーー庶民なので」


「庶民?」


「お金持ちや貴族だったら、たぶん執事が居て、こんな感じかもです」


「………さようですか?」


 余り理解していない様子で、根入さんは言った。

 朝また二人は温泉に浸かって、朝食を取ってスーパー銭湯みたいな、浴場場を出ると直ぐに大きな建物があって、そこが駅だから再び門番の所に行って中に入り、大理石の上を歩いて馬を選んでゲートを通過した。

 暫く何も無い道を馬に揺られて歩くと、目的地の駅に着いて馬を降り、世話係が慌ててやって来て馬を土のある所迄連れて行くから、馬は直ぐに放尿した。

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