街
第16話
ずっとずっと田園風景が続いていたけど、ちょっと根入さんや諸福さんと話し込んでいたら、景色が違う感じになって来て、大きな鳥居みたいな所に数人の人が立っていて、根入さんちの使用人が話しをしている。
「ご苦労様でございます。
「はい。有り難い事に我が国にも、お越し頂きまして………」
どうやら門番の人も、〝客人〟というモノを見てみたかったのだろう、丁重に根入さんと諸福さんに声を掛けて、チラチラと佐藤を見ている。
「そう言えば大国であっても、なかなかお越し頂けなかったですからなぁ」
和気あいあいと語っていると、他の門番も珍しいモノ見たさにやって来た。
「これが客人様か………」
「何やら、ご利益があるやもしれぬぞ?」
とかヒソヒソと言っているが、聞こえてくるから小っ恥ずかしくなってしまう。
〝客人様〟って、どうやらレアモノらしい。
「駅鈴をお使いとなられれば、直ぐに都に着かれましょう?」
「さようでありますが、佐藤様に物見雄山して頂きたく思いましてなぁ………」
「………と申されましても、此処を出れば再び田畑が続くのみでございますよ?駅路をお使いとなり、隣街まで行かれてはいかがです?あそこは温泉も出る温泉街でございますゆえ、ゆるりと致せますぞ」
「おお、それは妙案ですな!」
根入さんが、手に持っていた扇子のデカイヤツで、ポンと膝を打って言った。
「駅舎に向かわれるならば、あちらでございます」
門番が、真顔を作って根入さんに言っているが、偶に佐藤を見るから視線が合ってしまったりするから、佐藤は思わず頭を下げた。すると話し終えた門番も、慌てる様に頭を下げた。
「駅路とは………すっかり忘れておりました」
根入さんは、照れる様に諸福さんに言う。
「久しく、都にお戻りではありませんからなぁ………」
「いやはや………私は都勤めは性に合っておりませんから、此度参内致しましたならば、彼処に居られるよう懇願致す所存でございます」
「ああ。此度客人様をお連れ致すのです、褒美として国司様の願いは、聞き届け頂けましょう?」
「さようであろうか?………であるならば、客人様のお陰でございますな」
根入さんは、深く佐藤に向けて頭を下げた。
「さようさよう。私も長年の付き合いであります、国司様が引き続きお出でくだされば、こんなに嬉しい事はございません」
諸福さんも、嬉しそうに言った。
「………何と申しましても、気の合わぬ国司様がお越しとならば、これ程憂鬱な事はございません………」
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