第13話
「はて?奇跡……と申されましても?この国がこの国である事が、奇跡でございます………」
「…………………」
「大神様方は、お勤めを終えられますと、お隠れとなられるが常なのです。その大地の大神様が座す事自体が、奇跡で稀有なる事なのでございます」
「大地の大神様っすか?」
「はい。この国には数多の神々様が座し、その神々様が大神様の下においでとなり、私達を護ってくれているのです。ゆえにその数多なる神々様すらも、従えさせる程のお力を、天の大神様のお血筋の帝は、お持ちなのでございます」
「……………………」
佐藤はそういった、宗教的な事とかスピチュアル的な事柄は不得手で、それこそ葬式ですら作法通りに参列しているとは言えないし、初詣すら作法的にできているとも言えない感じだ。無宗教で信心深くもないし、神と仏の区別も実はあやふやなタイプだから、天の大神とか地の大神なんて言われても………の世界なのだ。
「すみません………無知で……」
「何を申されます。この国の事をお知りにならないのは、当然の事でございます。ただこの大地の大神様が、日本という国も、此処同様にお造りとなられまして、天の大神様に国を造るを赦されたのも同じなのです。ゆえにこの国の者達は、同じ様な国がもう一つ存在する事を、語り継がれて育って参りましたゆえ、我らは日本を存じておるのでございます」
「えっ?そうなんすか?そんな事、俺………僕達習わずに育った………」
「それも、致し方ない事でしょう?此処には地の大神様が座され、そちらには座されぬのですから………。それ故に帝の天から授かったお血筋の濃さが、違って参ったのでございますしょう」
「天の大神様の血筋……すか?」
「はい。実は私の縁者には、神に使える者がおりまして………文献などにも興味が行くのです………」
根入さんは、ちょっと苦笑いを浮かべる。
「帝は神獣をお抱きとなられるが為、この国に存在致す全てのモノを、従わせる事がおできとなられるのです」
「全てのモノって?」
「神とか魑魅魍魎とか鬼とか………」
「えっ?そういったモノが、居る世界なんすか?」
やはり異世界転生ってヤツか?
「ですから、帝がお抱きの神獣により、それらのモノ達も帝に従い、我らを護ってくれているのです」
「鬼とか魑魅魍魎とかを、成敗する勇者って居ないすか?」
「そんな者おりません。全てのモノが、護ってくれているのです。成敗などする必要など、ありませんゆえ………」
異世界転生ってヤツで、魔法みたいなの使えて、鬼退治とか魑魅魍魎退治とか、そんな世界ではないらしい………と、ちょっと残念に思う佐藤ではある。
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