上り

第8話

「ところで客人様」


 ちょっと硬めの料理を食べながら、国司の根入さんは言った


「あーーー佐藤です」


「佐藤?」


「まろうどさまではなくて、佐藤と呼んでください」


 何とも、この世界の食べ物は美味い。

 佐藤はチマチマと小皿に乗った、硬い料理を食べながら言った。

 何だかは分からないが、燻製なのか?この干した感が佐藤好みだ。

 ご飯も白米では無くて、ちょっと色が付いているし、ポソポソしていて硬いのだが、それが癖になる感じで後を引く。


「あー、では佐藤様、馬には乗れますでしょうか?」


「馬?乗った事無いです。チャリなら乗れるんだけど………」


「チャリ?」


「自転車です。そんな感じの物なら、多分乗れると思います」


 佐藤は小さい椀に入った、茶碗蒸しみたいな料理を、スプーンで口に流し込みながら答えた。お!椀の底の方に、鮑が………。


「………申し訳ございません。その様な乗り物は………」


「………ですよねー?車もバイクも、走ってないもんなぁ……そう言えば、ドラゴンとかもいないんすね」


「………ドラゴン?」


 根入さんと諸福さんが、異口同音で聞いた。


「あー。龍みたいなヤツです」


「龍?」


 二人は、同時に顔を見合わせると


「龍は、乗る物ではございません」


 諸福さんが、慌てる様に言った。


「さようさよう。天子様には、龍をお抱きとなられるお方がおられますが、龍神に乗られる事はありません」


「ええ!龍を天使は、抱いているンスか?」


 今度は、佐藤が慌てる様に聞く。


「佐藤様、天子様を〝天子〟と呼び捨てるは………」


 申し訳なさげに、諸福さんが言う。


「ああ。ここでは天使は〝様〟を付けるんすね?」


「当然でございます。天子様は、天の大神様の末裔でございますゆえ……」


「えっ?天使って神様じゃないだ?」


「………そうかもしれませぬが………現人神であられます」


「あらひとがみ?………なんか聞いた事ある様な?えっ?天皇陛下の事?」


「天皇陛下………ああ。日本では、その様に申されますか?我が国の天子様は、帝とお呼び申し上げます」


「………みかど………」


「………はい帝は、神獣をお抱きとなられると、聞いております」


 真剣な表情で、根入さんは答えた。


 ………神獣って、朱雀とか青龍とか玄武とかだよなぁ……抱くって何だ?……


 神獣とかは、ゲームでもよく出てくるキャラクターだ。その力を得てゲームを進めたりする物も多いから、そんな感じ?


 次から次と脚の付いた盆に、小皿に乗った料理が、メイドさんによって運ばれて来る。


「………この、ちょっと固めの黒い料理は何すか?」


「ああ……それは、イモリの炙りでございます」


「イモリ?」




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