第5話
「はあ………一大仕事でございます………とは申せ、この国の牛は馬力が半端ないですし、稲荷大明神の
「稲荷大明神の眷属様?」
「稲荷大明神は、稲の神様でございます。眷属様方は、狐を代表される方が多うございますが、存外の力持ちが選ばれる様でして………」
「えっ?じゃ、耕運機とかは無いんだ?」
「ああ……以前他国から、その様な代物の献上の打診があったようですが………そう言えば………ソレはどうしたんだったか?」
何とも呑気な諸福さんだ。
馬力云々言っているが、やっぱ耕運機だろう?
能率効率諸々考えたって………。
………って思うけど、何とも畑仕事している農家の人々、何だか楽しそうではある………。
文明の力が発達している、昨今の国々の農業は、遣り甲斐はあるけど大変だと聞いたし、天候によっちゃバカ高かったり、反対に安くなり過ぎて破棄なんて話しも聞くし………。
「我が国は殆どの物を、自国にて賄います」
「えっ?自給自足ってヤツですか?」
「はい。それが我が国の、方針でございます。ゆえに農業は、最も重要な仕事でして………」
ああ……日本は今や、他国からの輸入に頼り切っていて、その見直しを言及している人々もいるという。
確かに、国際的に広まったウィルス性の病気やら、戦争やらが生じると、輸入に頼り切りの日本は本当に危うい国で、一気にいろんな物が高騰する。
それが食物となれば、死活問題にもなりかねない。
「………じゃ、他国との貿易は全然無いんっすか?」
「いえ………全く無い訳ではありません。北と南の端では、それらを許されておる所もございますが、それは天子様がお許しとなられた、一部の場所にてです」
「………鎖国ってヤツっすね………」
「はぁ?………他国では何と申しておるのか、私など知りようもございませんが、何にしても不自由など、感ぜずに暮らしておりますから………」
とか言って笑った。
それって独裁政権の、自由の国を知らないで暮らしてる……ってヤツじゃないのか?
「ああ。着いた様でございますな」
車がゆったりと止まった。
暫くすると前のスダレが持ち上げられて、台を置かれた。
諸福さんがする様に、その台に足を置いて地面に降りると、なんと牛が放されて近場の雑草を食っている。
………なんか好い感じかも?………
とか思った途端、ボトボトと牛が放尿した。
………まじかー?牧場でも見かけない光景だぜ………
とか顔をしかめていると、牛世話係がいた様で、慌てて車の下から土を持って来て上に掛けた。
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