第8話 隣領で進む策謀

 アマツキ皇国と隣接する帝国領、カルドート。


 その地の領主であるマイバル・カルドートは昼間から酒を飲み、一枚の板で両手と首を拘束した女をベッドの上で乱暴に犯していた。


「ひぎぃ……! り、領主、さまぁ……! もう、ゆるしてぇ……」


「うるさいっ! ブタが生意気な口をきくんじゃない!」


「あぎぃっ!?」


 その女は村の視察に出た時に目についた女だった。屋敷に連れ帰ろうとしたところ、彼女の夫という男がお許しをと頭を下げてきたのが不快だったため、こうして乱暴に犯していたのだ。


 女はバックで激しく突かれ、尻は何度叩かれたのか真っ赤になっている。マイバルはそのでっぷりとした腹を揺らしながら、快楽を貪っていた。


「お前らがこうして生きていけているのは、全て領主である俺のおかげだというのに! まったく、学がないブタどもはこれだから……! ふんっ!」


「ああっ!」


 この地は元々帝国ではない、別の国が治めていた。しかし10年以上前に帝国が支配し、各地には領主として帝国貴族が送られ管理している。


マイバル自身も元は帝都に住居を構える中央貴族だった。正直、辺境の領主と中央貴族、どちらがいいかは難しいところだ。


 しかし領主はその土地の王である。こうしてその権力を振るえるのはやはり気持ちがいい。


「失礼します」


 全身に汗を流しながら腰を振っているところに、別の男が部屋に入ってくる。さっき部屋に来るように呼んだ男だ。


 マイバルはそちらを見ることもなく女との行為を続ける。


「来たか、ブリスよ」


 その男はマイバルが見つけた傭兵だった。刻印持ちであり、その実力も確かだったため、こうして手元において使っているのだ。


「あの件はどうなっている?」


「アマツキ皇国ですね。まだ使者の返答はありません」


「なぁにぃ~!? この……!」


「あ゛っ!? お、んん……っ! お、おやめ、ください……っ!」


 ブリスの言葉を聞き、マイバルは部屋中に響くような強さで女の尻を叩く。だが腰を振る速度は緩まなかった。


「もう30日は待ったぞ……! ふん、これまで帝国が隣接していなかったから、生き残れていただけの小国が……!」


「……一応準備は進めていますが。本当にやられるので?」


「当然だ……! 中央の指示だからな!」


 マイバルは以前、皇国に対し使者を送っていた。内容は遊牧民との取引をやめることと、帝国と商取引を進めていこうというものだ。


 商取引といっても、決して対等ではない。皇国製の物は越境手数料を取るし、帝国から売る物は1の価値があるものに対し、2~3の価格で取引しろというものである。要するに不平等な商取引を強要しているのだ。


 これにはいくつか理由があった。まず純粋にその国力の差である。


 国土の広さはもとより、兵数でも帝国が圧倒的に勝っているのだ。アマツキ皇国など平民戦力を合わせても、兵士数が4万に届くかどうかといったところだ。


 対して帝国には15万を超える騎士団があるし、それとは別に領主が抱える領軍もある。強引な徴兵を領主が行えば、もっと増やすこともできる。


 何より歴史が長い分、貴族の数……刻印を持つ騎士の数も多い。


 もちろんその全兵力を一つの地方に固められるというわけではない。だが昔よりいくらか体制が整いつつある今、中央がその気になれば皇国を侵略することもできる。


 そうした武力の差以外にも、帝国自体の都合も関係していた。


「アマツキ皇国の騎士……武人と言いましたか。相当な手練れが多いと聞きますが」


「だからこそだろぉ!? となりにあんなに恵まれた土地があるんだ、もし帝国に取り込めたら……! 武人どもは全員、西に送って暴れてもらおうじゃないか!」


「素直に言うことを聞きますかね?」


「聞くだろ? 皇族を人質に取ればよぉ!」


 長く他国と争っていないアマツキ皇国は、それなりに豊かだ。隣接する国も1つだけ、海もあって食べ物にも恵まれている。


 これまでは欲しくても手が出せない領土だったが、帝国も最近になって余裕ができてきたため、中央はここで皇国に目を付け始めた。


 何せ後ろ盾になっている国もない小国なのだ、そのくせ潤っているというのだから、財政面で疲弊してきた帝国としては是が非でも欲しい。


 とは言え最初の出方にはやはり慎重になる。そこでまずは様子見に、少し無茶に感じる要求を使者を通して打診した。皇国としては決して不可能ではないが、国家として飲めるかはまた別の話になる。


 もしプライドを捨てて帝国の要求を飲めば、時間をかけてさらに無茶な要求を繰り返していく。いずれ皇国も堪忍袋の緒が切れる時がくるが、その時にはすでに疲弊しているだろう。


 そしてもし要求を飲まずに断ってきたら。その時はいろいろ口実を作って攻め込み、強引に併合すればいい。それができるだけの準備は整えてきた。


「もう30日経ったんだ……! 中央も騎士団を回すと言ってきた! 最初はうちから犠牲を出すが……帝国政府はその補填もすると言ってきている! ふん……辺境の領主なんてと思っていたが、いよいよ俺にもツキがきたなぁ!」


「はうっ!?」


 マイバルは女の腰に両手を回すと、しっかりと組んで女を逃さないようにと互いの性器の密着度を高める。そして腰の動きを止めた。


 これに嫌な予感を覚えた女が、悲鳴に近い声を上げる。


「ひっ……!? ま、まさ、か……!? お、おやめください、中には……な、中には、出さないで……!」


「あぁん!? なぁんでブタ如きが領主である俺にそんな口をきいてんだぁ……? だがお前が俺に対する忠誠と愛を口にしたら、気分によっては考えてやるぞぉ?」


 そう言いながらもマイバルは両手に力を込め、女をより強く抱きしめる。


 このままではまったく抵抗できず、深い位置で子種を出される。その恐怖から女は懇願するように口を開いた。


「わわ、わたしは、偉大な領主様のブタです……! 民に優しく寛大な領主様を心からお慕い申しておりますっ! どうか、どうか……!」


「ふぅ~~~~~~。……あ? なんだって?」


「………………!?」


 マイバルは女の膣内で自分の肉棒をビクビクと痙攣させていた。ブルリと蠢くたびに、熱い精液が女の子宮内へと流れ込んでいく。


 女も自分の体内で不気味に動く領主の肉棒を感じながら、今まさに自分が種付けされていることに気付いた。


「い……いやああぁぁぁぁ! ぬ、ぬい、ぬいてぇぇぇ! お、おね、おねがい、です! き、今日は……ほ、本当に、できちゃう日なんです……! いや……い、いやああぁ……!」


「ぶっへっへ! 偉大で民に優しい、寛大な領主を心から慕っているんだろぉ!? その俺の子種だ、元気な子を産めよ!」


「ひいいいぃぃぃぃ!」


 女の膣内で射精をしながら、マイバルはブリスと会話を続けた。


「よぉし。兵士に適当な武装をさせておけ」


「……彼らはろくに訓練も受けていない平民がほとんどです。使いものにはなりませんよ?」


「んなもん、分かってる。それでいいんだよ、それでよぉ。ふぅ~~……。しかしせっかくの戦争だ、我が領に仕える騎士やお前にも楽しんでもらわないとなぁ?」


 女は叫ぶのをやめ、過呼吸を起こしながらすすり泣いている。マイバルはそんな女にもはや意識が向いていなかった。


「中央から騎士団が来たら、本格的に侵攻を開始する。略奪も許可する。どうせそれなりに豊かに暮らしてんだ、ちょっと荒らしても問題ないだろ」


「それは良かった。略奪が許されるかどうかは、士気にも関わりますからね」


 略奪は命を懸けて得た勝者の権利であり、また敵国の国力を直接削ることにも繋がる。ブリスはこれから始まる戦いの予感を胸に、部屋をあとにした。

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