本編
第3話 許せなかった
「ねえねえ咲良」
そう言って声をかけてきたのは幼馴染で超能力者の朱莉である。
「何?」
「咲良さ、なんであの先生見つめてるの?」
あの先生というのは今教壇に立っている担任の山川先生のことだ。山川先生は
「あの先生なんかモテるよね〜私は嫌なんだけど…」
「嫌?」
「なんか、オーラというか…嫌〜な感じが漂ってるんだよ…咲良ならわかると思ったんだけどな」
「・・・」
朱莉の言うオーラの正体はわかっている。私がさっきから見ていたものだ。
「そのオーラは先生から出たものじゃない。後ろの霊から出たものだよ。」
👻👻👻
放課後、私達は職員室の机の影に隠れている。下校時刻はとっくに過ぎているがこの時間でなければいけないのだ。山川先生が放課後、この時刻に職員室で誰かと会っていることは朱莉の超能力でわかっている。誰と会っているかはわからなかったが女性だろうということだった。
コツコツ
足跡が聞こえてきた。朱莉と顔を見合わせ、息を殺す。
ガララッ
扉が開いた。
「だからさぁ〜誤解だって…」
顔を見なくてもわかる。この声は山川先生の声だ。
「うるっさい!」
少し涙声になっているこの声は私の知らない声だ。実を言うと山川先生の声は毎日聞いているのでわかるが、ほかの先生の声はまだ覚えられていないのだ。朱莉は分かるかと思い聞いてみたが知らないようだった。
「あんたとは別れてやる!」
「おいおい待てって!」
どうやら山川先生の彼女だったようだ。なにやら揉めているようだがなぜ揉めているのだろうか。
「何よ、8股って。浮気してるって何となく察してたけど…探偵に調べてもらってよかったわ…」
素敵な情報をありがとう。彼女さん。まさかクラスにいる私以外の女子に人気な山川先生が浮気をしていたなんて。しかも8股とは…だが、それとあの憎しみオーラを散らす霊がどう関係しているのか検討もつかない。念の為隣の朱莉に聞いてみたところ
「うっそマジで?咲良検討もつかないの〜。私でも何となくわかったのに。咲良恋愛経験ないからな〜」
とにやにやされてしまった。朱莉だって大した恋愛経験ないくせに。
朱莉に聞くのは癪だが自分で考えても埒が明かないので考えを聞いてみたところ、
「これはあくまでも私の考えだからね、」
と前置きして教えてくれた。
朱莉曰く、あの霊は山川先生と恋愛でなにかトラブルが起こり、自殺した女性じゃないかということだ。女性は死んだ後でも山川先生が忘れられず、呪い殺そうとしているのかもしれない。あの霊は呪い殺すほどの妖力を持ち合わせているようには見えなかったが…山川先生も元気そうだし…トラブルの詳しい内容は分からないが、今の会話から想像して山川先生に浮気されたとかじゃないかとの事だ。
ホント、ろくでもないな。よくこんな人が教師になれたものだ。
ある程度の情報が集まったので今日は朱莉に頼んで瞬間移動で家へ送って貰った。先生とその彼女に見つかるから帰れないと思ったが、こういう時超能力は便利だ。
後は先生についた霊に直接話を聞くだけだ。
👻👻👻
霊にだけ話しかけられるピンマイクを使う日が来るとは思わかなった。霊感のことは隠していたから霊に話したことは無かった。使えるかどうかは分からないがこれを使うしかでは無い。
「ねえ、そこの幽霊さん。そうだよ。山川先生に取り憑いてるあなただよ。」
[誰ヨ、アンタ。…
「見えるよ。私は霊感があるから。雄ちゃんっていうのは山川先生のことだよね?あなたは山川先生の彼女?どうして山川先生に取り憑いてるの?」
【正確ニハ元カノヨ。付キ合ッテ直グ二捨テラレタモノ。同じクラスニナッタコトモ何度カアッテ、ズット片思イシテテ、ヤット付キ合エタト思ッタノニ…チナミニアナタノ言ウ通リ雄チャンハ
私まで呪い殺されそうな目つきで見てきた幽霊だつたが、私が無害だと思ったのか、あっけらかんと話し始めた。
「やっぱりあなたは自殺したの?死んだ原因はそれ?取り憑いてる原因もそれ?」
【ゴ明察。イツ雄チャンガ死ヌノカトワクワクガ止マラナイワ!】
まるで生きた人間のように頬を赤らめ、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「残念。あなたに人を呪い殺せるほどの妖力はないの。」
【ハ?】
「疑ってる?ホントだよ。この妖力チェッカーで調べたもの。」
【嘘ヨ!私ノ13年間ヲ返シテヨ!】
そんな前から取り憑いてたのか。山川先生は確か25歳と言っていたから、彼女が死んだのは小6だ。妖力が弱いのも納得がいく。元々大人っぽかったのか、顔が髪に隠れて大人に見えた。山川先生の彼女だから山川先生と近い歳で23~27歳ぐらいだという先入観もあったのかもしれない。
「あのね、よく聞いて。多分あなたは山川先生に悪意を持って捨てられたわけじゃない。だってその当時まだ子供だから。山川先生が悪いわけじゃない。どうか許してあげて。あなたは幽霊なんだもの。13年を失っても、これからあの世でいつまでも楽しく過ごせるよ。」
【…ホントに?】
「うん、だから安心して成仏して。成仏したあとも霊感が人一倍強い私になら話しかけられるかもしれない。嫌なことがあれば相談して。」
【ウン…アリガト…ジャアネ】
その瞬間周りがほんのりと明るくなり、気づけば彼女の姿は消えていた。消える直前の彼女は安らかな顔をしているように見えた。
「…幸せになれるといいな」
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