三
交換
「曼珠国に漂着した漁民たち、帰ってきましたね」
弟宮が王に訊ねた。
「ああ、領土割譲と交換だけどな」
「例の土地を渡したのですか」
「そうだ、あそこは人心が殺伐として官吏が居つかないんだ。我が国としても持て余していたので、ちょうど良かった」
「かの国は手荒なので、あの地には適切でしょう」
ほつれ目 愛恋
王妃が上衣のほつれ目を直していた。その姿を見て弟宮は
「姉上が針仕事するなんて久しぶりですね」
と言うと
「ええ、ここでは宮女が全てやってくれるから」
と王妃は答えた。
「これ主上のではないですか」
「そうよ、これだけは自分の手でやりたいから」
王妃の表情には愛恋の思いが溢れていた。
比喩 異聞 本、言葉
「姉上、持ってきましたよ」
弟宮が持参した書物を王妃に渡した。
「これが今、巷で流行っている本ね」
王妃が表紙を捲ろうとした時、王がやって来た。
「王妃も異聞集を読んでいるのか」
「今、読もうとしたところです、主上はお読みになりましたか」
「ああ、内容は面白いが言葉の選択と比喩が今一つだな」
「申し訳ありません」
弟宮は恐縮した口調で応じた。
木槿国の物語・日日是好日 高麗楼*鶏林書笈 @keirin_syokyu
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