交換

「曼珠国に漂着した漁民たち、帰ってきましたね」

 弟宮が王に訊ねた。

「ああ、領土割譲と交換だけどな」

「例の土地を渡したのですか」

「そうだ、あそこは人心が殺伐として官吏が居つかないんだ。我が国としても持て余していたので、ちょうど良かった」

「かの国は手荒なので、あの地には適切でしょう」


ほつれ目 愛恋

 王妃が上衣のほつれ目を直していた。その姿を見て弟宮は

「姉上が針仕事するなんて久しぶりですね」

と言うと

「ええ、ここでは宮女が全てやってくれるから」

と王妃は答えた。

「これ主上のではないですか」

「そうよ、これだけは自分の手でやりたいから」

 王妃の表情には愛恋の思いが溢れていた。


比喩 異聞 本、言葉

「姉上、持ってきましたよ」

 弟宮が持参した書物を王妃に渡した。

「これが今、巷で流行っている本ね」

 王妃が表紙を捲ろうとした時、王がやって来た。

「王妃も異聞集を読んでいるのか」

「今、読もうとしたところです、主上はお読みになりましたか」

「ああ、内容は面白いが言葉の選択と比喩が今一つだな」

「申し訳ありません」

弟宮は恐縮した口調で応じた。



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木槿国の物語・日日是好日 高麗楼*鶏林書笈 @keirin_syokyu

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