第24話 妄想が止まらない

「で、この問題は、この公式を使うの」


「な、なるほど……」


 美女って、本当にすごいな。


 俺って、そこまでバカじゃないけど、そこまで賢くもないから。


 例えば、数学のラストの難問なんて、ほぼほぼ解けないんだけど。


 彼女の教えで、すんなり解けてしまった。


「松林さんって、本当に頭が良いんだね。あ、別に疑っていた訳ではなくて……」


「うふふ、ありがとう。峰くんにそう言ってもらえて、嬉しいわ」


 ドキッ。


 いや、何でだよ。


 こんなの、アイドルの営業スマイルも同義だっての。


「じゃあ、次の問題だけど……」


「あ、うん」


「同じような応用問題。今度は、ノーヒントで解いてみて」


「ノーヒント……」


「で、もし解けなかったら……罰ゲームね」


「ば、罰ゲーム……っすか?」


「ごめん、嫌かな? でも、せっかくだし、ちょっと面白くしたいなって」


「松林さん……」


 この子こそ、真面目だと思っていたけど。


 ちゃんと、茶目っ気もあるんだな。


 そして、罰ゲームか……



『はーい、今からこのロクデナシの陰キャくんを公開ビンタしまーす♪』


『ビ、ビンタ……ですか?』


『それとも、踏みつけられたい?』


『そ、そんな、僕はブタなんかじゃ……』


『誰がブタやねん!』



 ……っぶねえ。


 また妄想内とはいえ、危うく浮気をするところだった。


 ていうか、これは浮気なのか?


 色々と歪みすぎだろ。


「あの、峰くん?」


「あ、はい?」


「ごめんね、私が余計な提案をしたばかりに……」


「い、いや、そんな……罰ゲーム、慎んでお受けします」


「うふふ、まだ受けると決まった訳じゃないわよ?」


「あ、そうか。あはは」


 ふと、俺は気が付く。


 いま、自分の彼女が、イケメンと2人きりで対面しているのに。


 そこまで、チラチラと気にしていない。


 それだけ、目の前のアイドル様に視線が釘付けになっている。


 俺はちゃんと、育実ちゃんが好きだ。


 けれども、やっぱり……誰しもを引き付けるアイドル様の魅力は、凄まじい。


 気をしっかり持たないと、妄想内で浮気を繰り返し、果てはそれが現実に……


 いや、ないない。


 こんな陰キャ野郎、せいぜい友達どまりだろ。


 いや、友達になることさえおこがましい。


 じゃあ、ペットになろうか。


 ていうか、何で俺の中で松林さんがドSキャラになっているんだよ。


「じゃあ、罰ゲームはどうしましょうか?」


「あ、えっと……お任せします」


「本当に? じゃあ、その時になったら、言うね?」


「わ、分かったよ」


 クソ、爽やかなアイドルちゃんのはずなのに……


 時々、言葉の節々に、エロさが漂うのは……なぜだろうか?


 ああ、そうか。


 もう、桐生とエッチしているからだ。


 女ってやっぱり、エッチすると、エロくなるもんな。


 何か急に、良い意味で冷静になれた。


 一瞬、なぜか分からないけど、このアイドル様が俺に気があると勘違いしたけど。


 どう考えても、そんなことはない。


 松林さんは優しく良い子だけど、男選びはちゃんとしている。


 ちゃんと、自分にふさわしい、桐生を選んでいる。


 そう、それは桐生もまた、同じこと。


 ちゃんと、自分にふさわしい、松林さんを選んでいる。


 だから、育実ちゃんを口説くことなんて……あり得ない。


 きっと、あの豊満ボディを目の当たりにしても、持ち前の爽やかスマイルを崩すことなく。


 落ち着いたまま、勉強を教えてくれる。


 全く、イケメンって生き物は、すごいよ。


 俺みたいなスケベとは、大違いだ。




      ◇




 ちょっと、舐めていた。


 いや、実際問題、舐め回したい。


 それくらい、魅惑的なボディだ。


「う~ん、この問題、難しいな~」


 思い悩む姿も、実にキュートだ。


 けど、そのカラダは……暴力的だ。


 この子は、色々な意味で柔らかくて、そんな暴力的じゃない。


 まあ、仲良しの彼氏に対しては、良い意味で暴力的みたいだけど。


 とにかく、今こうして目の当たりにする、そのマシュマロボディは……


 やばい。


 この前エッチした、花梨の体は実にシャープだ。


 アイドルにふさわしく、均整に取れた体。


 恐らく、女子が憧れるのは、花梨の方。


 けど、男子がそそられるのは……俵田さんの方だ。


 ついつい、想像、いや、妄想してしまう。


 あのたぷんとお肉がついた腰を掴んで、思い切り自分の腰も振る。


 そのさい、あのふんわりダイナマイトなおっぱいが、だぷん、だぷんと揺れる。


 ぽっちゃり体型だから、カップ数がそこまでバカデカい訳じゃないだろうけど。


 それでも、マンガとかアニメみたいに、分かりやすい乳袋よりも、あの生っぽさが……また実にそそられる。


 本当に、エッチなおっぱいだ。


 すげえ、揉みたい。


「ねえ、桐生くん」


「あ、何かな?」


「この問題、どうやって解くの?」


「あ、えっと、これはね……ここを、こうして……」


「あ、そっかぁ。すごーい、本当に頭が良いんだねぇ」


「いや、そんなことないよ」


「おまけにイケメンだし。さすが、かりんちゃんの彼氏って感じ」


「あはは、どうも、ありがとう。でも、俵田さんだって、峰と良い感じじゃない?」


「うん、まあね~。陰キャとブタちゃんだけど(笑)」


「あはは……」


 ブタなんて言うけど。


 確かに、そうかもしれないけど。


 君はとても、可愛いよ……俵田さん。


 ああ、峰のやつ、本当に羨ましい。


 お前、スケベみたいだし。


 俵田さんも、スケベらしいし。


 だから、もうきっと、しこたまエッチしまくっただろうな。


 ああ、羨ましい。


 だって、目の前のこのワガママボディのおっぱい……すごい。


 洗練された花梨のボディは確かに尊敬するし、魅力的だ。


 けど、所詮は人って動物だから。


 きれいに整ったそれよりも……


 ちょっと野性味が溢れるような、肉感的なボディにそそられるのかもしれない。


 とにかくまあ、俺は……


 すげえ、俵田さんと……エッチがしたい。


「ねえ、桐生くん。この問題は?」


「あ、これはね……」


 けど、落ち着け。


 荒ぶる性欲は、しっかり隠しておけ。


 暴発しそうになったら、また……花梨が静めてくれる。


 もちろん、俺も彼女の欲求不満を解消してあげる。


 お互い、本命を落とすための、協定パートナー関係にあるからな。


 ぐぅ~。


「えっ?」


「あっ……そ、そういえば、そろそろ、おやつの時間だな~……って。えへへ」


「…………」


「ご、ごめんね、ブタちゃんで……」


「いや、そんなことは……」


 ……あっぶねえ。


 マジで可愛すぎて、気絶するところだったわ。


 やばいな、早くこの子をモノにしないと。


 俺、その内、犯罪行為に走っちゃうかもしれない。


 もちろん、そんなことしたら、人生終了だけど。


 それでも、この豊満ボディを抱けるなら……なんて。


 ヤバい思考に入りかけているから……


「よし、おやつタイムにしようか」


「わーい! よっくん、かりんちゃん、おやつの時間だよ~!」


 はしゃぐその姿を見て、やっぱり可愛いと思ったし。


 もう好きなだけお菓子を食べさせて、さらにその魅惑のボディに磨きをかけて欲しいと思った。


 いや、磨くんじゃなくて、肉付けだな。


 どちらにせよ、たまらん。




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