第7話 全て詰まっている

 目の前に、肉のかたまりがある。


 いや、かたまりなんて言い方、失礼だしふさわしくない。


 ふんわり、マシュマロボディさん。


 それがベッドの上で、その大きな胸を上下させている。


 その胸と大事なところしか見えない、このアングルがやばすぎるから。


 俺はサッと、俯瞰ふかんで見る。


「はぁ、はぁ……」


 今度はちゃんと、可愛い顔が見えた。


 まあ、先ほどまでずっと、少し乱れていたけど……


「……最低だよ、みねくん」


「た、俵田たわらださん? どうして、そんなことを……」


 もしや、エッチが下手くそすぎて、幻滅されたか?


 この子、俺が性欲の強いエロサルで、きっとエッチも上手いと見込んでいた節があるし。


 けど、所詮は童貞だから。


 必死に腰を振ることしか出来なった。


 まあ、パンパンと、それなりに良い音は鳴らしたつもりだったけど……


「……もう、何回イッたか覚えていない」


「へっ?」


育実いくみだけに、イク~……なんつって」


 ふいのボケに俺はポカンとしてしまう。


「ちょっと、スベったみたいな空気にしないでよ」


「あ、いや、ごめん……何か、可愛すぎて」


「へっ? も、もう、バカ……」


 俵田さんは、よいしょ、と起き上がる。


「あっ」


「えっ?」


「いや、もう少し、寝そべるワガママボディを拝みたかったから……」


「誰がデブやねん」


 ビシッ、と叩かれる。


「いや、言ってないから」


「そう言う意味でしょうが、ワガママボディって」


「ごめん」


「それに、ワガママなのは、君の……」


 言いかけて、俵田さんは口をつぐむ。


「どうしたの?」


「……改めて、確認しちゃうけど……本当に、童貞なの?」


「いや、まあ……いま、卒業ホヤホヤですけど」


「う、うるさい」


 ぺち、と叩かれる。


 先ほどよりも、威力が弱い。


「あの~、ちなみにですけど、俵田さんも……処女でしたか?」


「何で敬語なの?」


「いや、大事な確認なので……」


「……もし、違うって言ったら?」


「えっ……しょ、処女じゃなかった……の?」


 俺がにわかに焦り出すと、俵田さんはジッとこちらを挑発するような、値踏みするような、そんな目線を向けて来る。


「……処女じゃなかったら、ダメかな?」


「あ、いや……そんなことは……ないよ」


「めっちゃ震えているけど?」


「うっ……嬉しいよ、俵田さんの……2番目の男でも」


「うーそ」


「はい?」


「ちゃんと……処女だったよ」


「ほ、本当に?」


「だって、血が出たでしょ?」


「あ、そういえば……ていうか、ごめん。ベッドが汚れちゃって……」


「良いよ、シーツ洗えば良いし。何なら、記念に取っておこうかなって」


「や、やめときなよ。親にバレたら、ちょっと大変そうだし」


「うん、そうだね」


 俵田さんは、くすくすと笑う。


「で、改めて聞くけど、わたしとのエッチ……どうだった?」


「最高でした」


「即答かい。そこはもっと、恥じらいなよ」


「ちなみに、1つ聞いても良いですか?」


「どうぞ、峰くん」


「このデカパイ、何カップですか?」


「教えません♡」


「あ、ていうか、そこに落ちているブラを見れば……」


「チェストォ!」


「ぐほっ!?」


 思い切りぶっ飛ばされた。


 太っている子って、力持ちって言うけど……すごいな。


「ガクリ……」


「おーい、死ぬなぁ」


 場外でくたばる俺のそばに寄った俵田さんが言う。


「……ほれ」


 そして、ブラの裏側にある、サイズ表記を見せてくれた。


「……E80……ってことは、Eカップ?」


「うん」


「あ、それくらいなんだ……もっと、上のサイズかと思った」


「まあ、デブですから。アンダーがデカい分、カップ数もそんな行かないんだよ」


「だとしても、Eカップって普通にすごいけど、女子高生で……」


「ちなみに、E80はトップが100だから」


「……んっ?」


「100cm」


「……それって、1メートル?」


「まあ、そうだね」


 俺は内側から、ふつふつと沸き上がる何かを感じた。


「峰くん?」


「……ごめん、ちょっと大きな声を出しても良い?」


「あまり、近所迷惑にならないようにね」


「でっかああああああああああああぁ!?」


「君の声がね!」


 ベシッ。


「ああ、ごめん……」


 はたかれて、少し冷静さを取り戻す。


 けど、俺は興奮して鼻息が荒くなってしまう。


「す、すげえ……俵田さんのおっぱい……1mなんだぁ……でっけぇ」


「ちょっと、あまりジロジロ見ないで……」


「あの、1mと改めて知ったうえで……顔をうずめても良いですか?」


「えっ、嫌だよ。何か気持ち悪いし」


「ガーン!?」


 俺はその場で溶けて消えそうになる。


「……なーんて、うっそ」


「えっ?」


「ほれ、おいで」


 俵田さんは、泣きべそをかく俺に対して、両手を広げる。


「マ、ママぁ……」


「いやいや、彼女でしょ?」


「ああ、そうだね……ごめん、まだ実感が湧かなくて」


「じゃあ、第一歩として……名前で呼び合う?」


「う、うん……い、育実いくみちゃん」


善和よしかずくん……だから、よっくんって呼ぼうかな」


「わ、悪くないね」


「こら、上から目線」


「ち、違うよ、照れ隠しだよ」


「なら許す」


 そして、俺はこの世の幸せが全て詰まったような、1mおっぱいに包まれた。




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