第4話 BSS(僕が先に好きだったのに)はやめて

 夜。


 ベッドに寝転がりながら、俺は手ごたえを感じていた。


 いや、チ◯ごたえかもしれない。


 下品で申し訳ないけど。


 俺のオスとしての本能が、レーダー的に反応している。


 今日の俵田さんは、少し……メスの顔をしていた。


 大してイケメンでもない、むしろ学園カーストにおいて下層に位置するであろう、この俺に対して……


 いや、まだ確信するのは早い。


 ただ、少しずつだけど、確実に……俺の狙い通りに、事が進んでいる。


 あの、理想的な豊満シコリティ女子を、我が物に出来る……かもしれない。


 けど、ここで油断してはいけない。


 何事も、上手く行っている時ほど、うっかりやらかしてしまう。


 まあ、その失敗も、後々にリカバリーすれば、むしろ大きく前進するかもしれないけど。


 俺はそんな危ない橋を渡りたくない。


 衣替えまで、あと1ヶ月半くらい。


 それまでに、彼女を、俵田さんを攻略しないと。


 あの豊満シコリティボディが、思春期エロ男子たちの目にさらされてしまう。


 そして、今まで彼女を意識しなかった野郎どもが群がり。


 下手すれば、イケメンに奪われてしまう……おぉ、BSS(僕が先に好きだったのに)。


 その屈辱的な展開は避けなければならない。


 俺だって、男だ。


 負ければ、悔しい。


 今までだって、陰で涙を流して来た。


 その結果として、心の平穏を保つために、色々とあきらめて来た。


 けど、俵田育実たわらだいくみ……俺が理想とする、豊満シコリティ女子は、他の誰にも譲りたくない。


 処女かどうか、分からないけど。


 きっとそうだと願って。


 彼女の何もかも、初めてを、俺がいただく。


 アイドル的存在、松林さんと同じクラスで良かった。


 彼女の陰に隠れて、俵田さんが目立たなくなる。


 薄々、その魅力に勘づいている奴がいたとしても。


 今はまだ、松林さんムーブ。


 だから、その間に、何としても、攻略せねば。



 ピロン♪


 噂をすれば、豊満シコリティちゃんから、メッセが……


「……えっ」


 俺は愕然とする。


 ただし、決してマイナスのメッセが遅れて来た訳じゃない。


 むしろ、有り余るプラス方面と言うか……


『……あたしって、太っているかな~……なんて』


 恐らく、パジャマ代わりのラフなTシャツ姿で。


 何だか色々と、強調されていて。


 少し照れながらも、しっかりとカメラ目線のアピールで。


 そんな写真が、添付されていた。


 ちょっと、静かに決意を固めていたのに、一気に股間に血流が巡って……


 いや、落ち着け。


 ここでのアンサーは、大事だ。


 あまりにも、露骨にエロいことは言うべきではない。


 かと言って、かっこつけて透かしたような、鈍感男子みたいな返しもダメ。


 今の俵田さんは、少しメスとして発情しているかもしれない。


 だから、その本能を……くすぐってやるんだ。


『まあ、失礼ながら、決して痩せてはいないと思う』


 まず、俺はそう返す。


『うう、やっぱりデブなのかなぁ?』


 と、悲しげに言うので、


『いや、違う……その、怒らないで聞いてね?』


『なに?』


『……正直に言って、たまらないボディだよ』


 ちょっと、ギリギリの線を攻め過ぎたか?


 いや、大丈夫、自分を信じろ。


『女子は、細い方が良いって思うだろうけど。男目線から行くと、むしろ、俵田さんくらいのボディが……最高です。だから、自信を持って』


 本当は、あまり持って欲しくないけど。


 自信満々になって、自分からイケメンにアピールされて、くっつかれたら、目も当てられない。


 BSSはやめて!(泣)


『峰くんって……実はエッチだよね?』


『うっ……ごめん』


 さて、問題はここからだけど……


『……まあ、嫌いじゃないけど、そういう男子のこと』


『ほ、本当に?』


『うん、まあ……あたしのこと、少しは魅力的に思ってくれている……ってことだよね?』


『いや、ちょっとどころじゃない。だいぶだよ』


『ふふ、何よ、それ』


 おぉ、これは……良い手ごたえだ。


 俺は思わず、俵田さんの豊満乳を想像して、エア揉みしてしまう。


『ねえ、あのさ……今日の買い出しって、何かちょっと……デ、デートみたいだったよね?』


『えっ? ああ、うん……そうだね』


『でも、どうせなら、もっとちゃんとしたいよね~……なんて』


 おいおい、マジかよ……


『じゃあ……しちゃう?』


『……良いの?』


『うん。ご存知の通り、俺って友達がいない、ボッチだから。休日はいつだってヒマだし』


『ふふ、またそんなこと言っちゃって……じゃあ、約束通り、あたしの胸……貸してあげようか?』


『そんな優しいこと言われると、俺……本気にしちゃうよ?』


『もう、峰くんってば、意外とチャラくない?』


『おい、それは聞き捨てならない。俺をそんな連中と一緒にするな。俺は……』


『俺は……なに?』


『……いや、今はやめておくよ』


『え~、気になるぅ~』


『じゃあ、今度のデートまで……楽しみにしておいて』


『……うん、分かった』


 すると、ピロン♪


 また、写真が送られて来た。


 俵田さんが、その豊満な胸に手を置いて、少し悩まし気な表情で。


『……ドキドキして、眠れないかも』


『……俺の方こそ』


『ふふ、やっぱり、チャラい。隠れチャラ男め。確か、峰くんみたいな人、ロールキャベツ男子って言うんだっけ?』


『俺はそんな肉の塊ではない』


『こら、誰に向かって言っているの? あと、どこ見ているの?』


『いや、見ているというか、見せつけられているというか……』


『もう、峰くんのバカ……おやすみ』


『おやすみ』


 そして、やりとりを終える。


 俺はベッドに四肢を投げ出し、天井を見つめる。


「……シ◯るか」


 既存のお宝コレクションを遥かに超える、ビッグなオカズを手に入れたので。




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