第5話 音楽室

アユカのケガの治療の為に、

センパイとアユカは……保健室へ向かっていった。



()


ぼぉーっとしながら歩いているとあたしは、いつの間にか



久留須センパイのよく居る、音楽室に来ていた。



鍵盤はピカピカと光っていて、

まるで久留須くるすさんを待ち望んでるかの様にも見えた。




(そう言えば。昔少しだけ習ったよね?)


指が覚えている。




あの曲 ……。あたしはセンパイに向けて……


聞いても居ないのに鍵盤を覚えている範囲でひきだした。




演奏していると、、、久留須センパイの腕の温もりが忘れられない。



今もこうして、センパイの使うピアノに指を置いている。



演奏がクライマックスになると

途端に、あたしはピアノを弾くのを辞めた。




鍵盤にあたしの涙が……こぼれる。



 


消え入るような声を出しながら、





あたしは泣き続けた。




『センパ …………。』



想いが通じても、うまく行かない。哀しさが込み上げてきた。




『ダァーーーン……!!』



両手を思い切り鍵盤を叩くと

哀しい旋律が……音楽室中に響いた。




涙がとめどなく溢れる。




『どうして ……。』


いつの間にか。あたしは……


誰にも聞かれない様に、声を漏らしながら泣いていた。

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