第二章 6話 謀略
無事、汽車の旅を終えた少女はそのまま花屋へと向かい今日一日のおつかいでの大冒険の出来事を花屋に報告していた。
「…それでですね!!画家さんがこんな凄いのをくれたんですよ!凄くないですか!?」
「そうね、とっても綺麗だわ。」
表情をコロコロと変えながら身振り手振りを交えて話す少女の言葉を微笑みながら花屋は聞いて頷いていた。花屋は日が気がつけば暮れかけていることに気がつくと。
「あらもうこんな時間。遅くなるから帰りましょうか。お金はマスターに渡しておくから後日まとめて貰ってちょうだいね。いっぱい届けてくれたから沢山貰えるわよー!」
「本当ですか!?嬉しいです!!今日一日ありがとうございました!!」
「またいつでも働きにきてちょうだいね。」
「もちろんです!!!」
少女はスキップしながらウキウキの足取りで帰路につく。
「今日は楽しかったなぁ…秘書さんに今日のこと報告しなきゃ!。でも手紙まだ残ってたかなぁ…可愛いプリントのあったんだけど…」
少女は文通相手に何を書くか考えながら歩いていた。この文通相手とはなんとオルガムート帝国の秘書の事である。実はこの少女、何を隠そうオルガムート帝国25代第二皇女、『オルガムート・センドリウス・ニッカ』その人なのであった。現在絶賛行方不明中の彼女は日夜帝国兵が血眼で捜索しており多額の懸賞金がかけられている。
だがしかし、その少女の失踪に皇帝の右腕である秘書が絡んでおり、捜索網をもみ消しているという事は皇女本人も含めたほとんどの者が知らない事実である。
どうして秘書が皇女の家出を容認しているのか、どうして存在を隠しているのか、事実が明らかになるのはもう少し先の事となるだろう。
そんな国の大騒動を知らない皇女は手紙を書いて明日の朝ごはんのことを考えながら、今日もすやすやと床につくのであった。
それから何日か経過し、皇女がバイトの定休日により仕事を休んでいる日の喫茶店内はいつも通りの騒がしさだったが、店の奥の目立たない角席にて、三人の男がひそひそと話し合っていた。ハゲ頭が特徴的な筋肉質の男が義手の男と瘦せぎすの男を呼んで何かを相談しているようであった。
「本当なのか?その噂のお姫様ってのは」
「あぁ間違いねぇ、昨日もこの目ではっきりと確認したがあん時の娘だったぜ。」
「しっかし怪しいもんだぜぇ?本当にここのバイトの小娘が噂の高額賞金の第二皇女様なのか?」
「あたぼうよ…ここに動かぬ証拠があんだよ、コレを見てみなって。」
そう言ってハゲ男は懐から取り出したハンカチをテーブルの上へと置いた。
「??…ただのハンカチがどうしたってんだ。」
義手の男がハンカチを怪訝そうに見やる。
「いいからここをよく見ろ!この紋章が見えるだろ?」
ハンカチの端には双頭の鷹が翼を広げている紋章が印されていた。
「いいかこの紋章は皇帝の血族の家紋だ。この紋章の物をおいそれと使えるやつなんか盗んだ命知らずな奴か皇帝の血族しかいねぇんだ。それに証拠はもう一つある。この街の7不思議って知ってるか?」
「7不思議??なんだそれ??」
「この街の7不思議だよ、一つ目は絢爛祭で告白したカップルは付き合う。二つ目は教会のシスターに恋した者は街から消え去るとか殆どは適当な噂だが、問題は最後の一つだ、「この街には皇帝の血が流れている」ここまで聞いてもピンとこねぇか?」
「でもよぉ…証拠がハンカチと街の噂っていささか不安じゃねーか?」
瘦せぎすの男が不安げに聞く。
「偶然にしちゃあ出来すぎだろ!間違ってたら適当な裏の卸屋に売りさばいてしまいだ。どっちにしろ金は手に入るだろうが。」
「まぁそこまで言うんならいいけどよぉ…でもどうやって誘拐すんだよ?店前で構えんのか?」
「いや、いい案がある。ちと黙って待っててくれ。」
そういうとハゲ男は人の良さそうな顔で掃除をしているマスターへと近づいた。
「マスターさんや、今日はウェイトレスの嬢ちゃんは居ないのかい?」
「あら?今日はあの子は休みなの、何か用なんですか?」
「いやぁ、街でこないだ飲み物をこぼした時にハンカチを貸してくれてさ、お礼がしたいと思ってよぉ。どうか家とか教えてくれねぇか?頼むこの通り!」
「でも…そういうのはちょっと…」
「そこをなんとか!!どうか!!」
ハゲ男が手を合わせ懇願する。
「…しょうがないですね。メモを書きますので少々お待ちを…絶対に悪いことにはつかわないでくださいね?」
そういうとサラサラとメモを取ってハゲ男にメモを手渡した。
「他の人に教えたりしちゃダメですよ!!」
「本当にすまねぇ!!恩にきるぜ!!」
そういうとハゲ男は店を出て行った。残りの二人も連れだとバレないように遅れてそっと店を出る。店から離れた裏路地にて男三人はメモを確認する。
「策とか言ってたくせにお願いするだけかよ…」
「へっへっへ…あの女も随分と平和ボケしてやがる…お前ら今日の夜に実行だ…楽しみにしておけよ…」
三人の薄気味悪い笑いが路地裏に木霊するのであった。
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鳥も寝静まる真夜中、三人の男がメモを頼りに目的地へと向かって忍んで歩いていた。
「おい…あそこだ…」
メモに書かれていた建物はアパートの一室であった。小さな扉があり、こじんまりとしている印象を受ける。男たちは扉のすぐそばに着き、突入を待った。
「行くぞ…3、2、1、…GO。」
ハゲ男の指示とともに義手男が扉を押しあけると想像よりもすんなり開いた。部屋の中は人がおらず、棚や椅子もない生活感の一切空間だった。中央に机が一つあり、上には様々な色のオダマキの花が花瓶に入れられていた。
「おい!!誰もいねぇじゃねぇかよ!!」
「どういう事だ!?確かに間違ってないはずだぞ!!」
「隠れてるかもしれねぇ!探せ!」
男たちが殺風景な部屋を探し回っていると、突如扉の外から声が聞こえた。
「女性の部屋に入るにしては随分と乱暴な行動だと思わないかしら?」
to be continued…
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