第8話


浜田に嵌められて追放された俺は、森の奥へと向かって進んでいた。


浜田は俺と彩音の手柄を横取りし、俺を嵌めて追放した。


あいつは二度と僕たちの前に姿を見せるなと言った。


もしあいつらに次に見つかったら何をされるかわからない。


現状この無人島ではクラスを掌握した浜田が法だ。


だから追放された俺はなるべくあいつらから離れなくてはならないだろう。


「まぁでもこれで良かったのかもな」


追放はされたが、俺は現状をあまり悲観してはいなかった。


なぜならこれで俺はクラスという枷が外れて自由に動けるからだ。


「生き延びるための知識が…俺にはある」


俺にはかつて厨二病を拗らせて、人があまり知らないような知識をひたすらネットで集めまくっていた時期があった。


その中には森の中で生き延びるためのサバイバル知識なども含まれていた。


「封印したい黒歴史時代の行動がまさかこんなところで役に立つなんてな…」


あの頃、ノートに書き連ねていた無駄知識が、まさかこんなところで活躍することになろうとは。


おそらくだが、あの頃集めた知識を駆使すれば、俺はこの無人島で一人でも生き延びることができるだろう。


「まずは飲み水を探さないとな」


浜辺から十分離れたと判断した俺は、まずは飲み水を探すことにした。


俺と彩音が見つけた湧き水スポットは、浜田たちに奪われてしまった。


あそこはもう使えない。


なのでまずは、新しく真水が飲めるスポットを探し、そこを拠点として生活基盤を築いていこうと思う。


「あった…!!」


追放されてから数時間。


森の中を歩き回った俺は、新しく飲み水が飲める場所を発見していた。


それはちょろちょろと細く流れる川だった。


水は澄んでいて、とても綺麗だ。


試しに手に救って口に含んでみる。


「問題なさそうだな」


水はとても美味しかった。


これなら飲んでも問題なさそうだ。


「さて…ここの近くを拠点にするか」


俺はこの小さな川の近くを拠点にすることに決めたのだった。




「だいぶ生えてるな」


水で喉を潤した俺が次にしたことは、食糧の確保だ。


と言ってもいきなり動物を捕まえたり、魚をとったりするわけではない。


まずは簡単に見つけられて食べられそうなものから採っていくことにした。


具体的にはキノコだ。


「この赤いやつが確か食べられるんだよな…」


この無人島に主に生えているキノコは大きく分けて二つ。


背の低い茶色いキノコと背の高い赤いキノコである。


椎茸や松茸に似た背の低い茶色いキノコこそいかにも食べられそうで美味しそうなのだが、実はこれには毒がある。


反対にいかにも毒がありそうな赤い毒々しい色をした背の高いキノコの方は、意外にも毒がなくて美味なのだ。


「初見だと絶対にわからなかっただろうな」 


俺は茶色い毒キノコはスルーして赤い方を積んでいって食べる。


口に含んで咀嚼するとビリリとした刺激が口の中に広がり、ちょっとドキッとするが、大丈夫だ。


こっちには毒がないはず。


俺はあまり美味しくない赤いキノコを我慢して食べた。


「さて…次は家だな」


ある程度腹がみちたら、次に俺は簡易住居を作ることにした。


生活基盤を作るには雨風を凌ぐための簡単な住居が必要だ。


「ええと……確かこの木の皮がちぎれにくくてロープの代わりになるんだったよな」


俺はロープの代わりとして使える木の皮を剥いで集め、次に骨となる木材を集めた。


そしてそれらを組み合わせて即席の簡易住居を作った。 


「ふぅ…出来た…」


完成する頃には日が暮れかけていた。


疲れたが、同時に達成感で満たされていた。


これで雨が降っても体が冷えるのを防ぐことができる。


「さて…火を起こすか…」


日が完全に暮れる前にまだやることがある。 

それは火を起こすことだ。


「乾いた木材を使って……空気の通り道を作って…」


俺は火を起こすための乾いた木材を集めた。


そして近くにあった尖った石を使い、その木材にしっかりと空気の通り道となる溝を作った。


あとは映画よろしく擦り合わせればすぐに火がつくはずである。


「ただこするだけじゃなくて空気の通り道が重要なんだよな」


木材を擦り合わせて摩擦を起こすだけではダメなのだ。


重要なのは空気の通り道。


これも厨二病時代に集めたサバイバル知識の一つである。


「お、ついたぞ」


木々を擦り合わせて数分後、早くも摩擦で煙が出始めた。


ふー、ふーとさらに息を吹きかけて空気を投入してやるとやがて火がついた。


「よしよし。あとは…こっちに移して…」


俺は火を集めておいた木材の方へ移した。


そして落ち葉なども投入し、火を消える心配がないくらいまで大きくする。


「あったけぇ…」


焚き火が出来上がったら、悴んだ手足をかざして温めた。


これで寒い夜も越すことができる。


「順調だな…」


追放された俺のサバイバル一日目はそんな感じで過ぎて行ったのだった。

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