無人島でクラス追放された件〜昔蓄えたサバイバル知識で一人でも余裕で生き延びます〜え?毒キノコが見分けられない?罠が作れない?知らねーよ自分たちでなんとかしろ〜
taki
第1話
俺たち北高校二年B組は現在、修学旅行で沖縄を訪れていた。
「海綺麗ー!!!」
「だな」
沖縄本島から出発し、離島へと向かっているフェリー。
その甲板に立って、俺こと佐久間翔太は、幼馴染の島崎彩音と共に綺麗な水平線を眺めていた。
周りにはポツポツと緑に覆われた島が見える。
東京にはない、圧巻の光景だ。
「ねぇ、翔太…私ね…」
俺が海の青、島の緑のコントラストに目を奪われていると、彩音がもじもじしながら何かを言いたそうにしている。
「どうかしたか?彩音」
「あ、あの……えっと、私、翔ちゃんにずっと言いたいことがあってね…この修学旅行で言うって前から決めてたんだけど…」
「…?」
俺は珍しいなと思った。
彩音とはもう十年以上の付き合いになる。
だからお互いに心を許し切った関係というか、彩音は普段俺に対してもっとズバズバと歯切れのいい物言いをするのだが、今日は違うようだ。
さっきから俺の方をチラチラと見て、何やら照れくさそうにしている。
「わ、私ね…翔ちゃんのことが…」
「俺…?」
俺は名前を呼ばれて自分を指差す。
ちなみに翔ちゃんってのは俺のあだ名だ。
翔太だから翔ちゃん。
「翔ちゃんのことが…」
「俺のことが…?」
俺は彩音の言葉を待つ。
彩音は顔を赤くしてモジモジしながら何かを言いたげにしていたが、やがてくるっと背中を向けて走り出してしまった。
「やっぱりあとで言う!!今は無理!!!」
「え…おい、彩音!?」
彩音はあっという間に走っていってしまった。
「なんだったんだ…?」
俺はちょっとドキドキしていた心臓を落ち着ける。
びっくりした。
てっきり告白されるのかと思った。
「ま、そんなわけないけどな…」
あの状況なら告白されてもおかしくない。
一瞬そんな考えが浮かんだのだが、よくよく考えてみればあり得ない。
彩音は俺みたいなのには勿体無いぐらい可愛いからな。
栗色の髪の毛。
出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる抜群のスタイル。
そして極め付けは、テレビ女優顔負けの容姿。
幼馴染でなかったら本来関わることすらなかったであろう高嶺の花だ。
そんな彩音が俺に告白なんて……ないない。
あり得ない。
「俺もそろそろ中に戻るか」
十分船の外の景色も楽しんだ。
喉も乾いたし、船内の自販機で何か買うか。
そんなことを思った矢先だった。
ガァン…!!!!
「うおっ!?なんだ!?」
何かにぶつかった様な鈍い音が海の中から聞こえてきた。
それと同時に、フェリーがぐらっと傾く。
シュゥウウウウ…
「え…止まった…?」
と思ったら突然エンジンでも止まったのかフェリーが動かなくなった。
「何かトラブルか…?」
「な、何…?どうして止まったの…?」
俺以外にも甲板にいた人たちがざわつき出す。
次の瞬間だった…
ゴゴゴゴゴゴ…
「ちょ、嘘だろぉおおおおおお!?」
鈍い音と主にフェリーが傾き出したのだ。
「「「きゃぁああああああ!!!!」」」
「「「うわぁああああああ!!!」」」
あちこちで悲鳴が上がる。
フェリーの巨大な船体が段々と傾いていって、海面が迫ってくる。
「彩音!?彩音は…!?」
俺はフェンスに捕まって必死にバランスをとりながら、彩音の名前を呼ぶ。
「翔ちゃん!!翔ちゃん…!」
「彩音…!」
遠くで俺を呼ぶ彩音の声が聞こえる。
俺は彩音の声のする方へ向かおうとしたが、四十五度を超えて船が傾いていて動くこともできない。
「うおおおおおおお!?!?」
そのまま船はどんどん傾き、ついに俺の体は水の中へと投げ出されたのだった。
「翔ちゃん…!起きて!翔ちゃん!」
「ん…?」
誰かに体を揺さぶられて俺は目を覚ます。
「彩音…?」
「よかった翔ちゃん…!無事だったんだね…!!」
「ここは…?」
目を開けると、視界いっぱいに涙ぐむ彩音の顔があった。
俺は体を起こして辺りを見渡す。
そこはどこかの海岸だった。
俺は白い砂浜に仰向けで倒れていたらしい。
「一体何が…?助かったのか…?」
あの時確かにフェリーは沈没し、俺の体は海の中へと投げ出された。
その後の記憶がない。
俺はあのまま運よくこの海岸に流れ着いたのだろうか。
「わからない…私も何が起こったのかわからない…でも、私たちB組の生徒がこの島に流れ着いたみたいなの…」
「島…?どこの島だ…?」
フェリーからたくさん見えた離島の一つにでも流れ着いたのだろうか。
「それもわからない。でもなぜだか私たちB組の生徒全員が揃ってて、他には誰もいないみたいなの…」
「いや、そんなことありえるか…?」
俺は彩音の言葉が信じられなくて、辺りを見渡す。
「けほっ、けほっ…」
「うぅ…私たちどこに流れ着いたの…?」
「ら、ラッキー……溺れて死んだと思ってたけど生きてたー…」
確かに本当だった。
周囲には見知った顔しかいない。
皆、この島に流れついたようで、口に入った海水を吐き出したり、身体中に入った砂を払ったりしている。
「沈没したんだよな…?多分」
「そうだと思う…」
「何かにぶつかったのか…?船が止まって傾き始める寸前、すごい音が海の中からしなかったか?」
「うん、私も聞いた」
どうやらあの音は絢音も聞いたらしい。
おそらく俺たちの乗っていたフェリーは、何かにぶつかるかしてそれが原因で沈没した。
そしてなぜかこのどこともしれない島に、俺たち北高校二年B組の生徒のみが流れついた。
「なんか臭いな…あまりにも偶然が重なりすぎている気がする…」
「私も…」
俺も彩音もこの状況に違和感を覚えていたが、しかしそれ以上考えても何も思い浮かばなかった。
「とりあえず助けを待つしかないか」
「来るかな、助け…」
彩音が不安げに言った。
「…?どう言うことだ?」
何千人も乗っていたフェリーが沈没した大事件だ。
すぐに捜索隊が派遣されて俺たちは発見されるだろう。
そう思ったのだが、彩音の表情には不安が浮かんでいた。
「流石に来るだろ」
「私たちが沈没した近くの島に流れ着いたのならね」
「え?どう言うことだ?」
「周り、見てみて、翔ちゃん」
言われて俺は海岸から島の周りを見渡す。
そして呆然と呟いた。
「冗談だろ?」
フェリーから見えたたくさんの小さな離島が、あたりには一つも見当たらなかった。
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