第20話 失敬(しっけい)
「国語辞典」には、
①礼儀に反するようなことをして、相手に不快感をいだかせること(様子)。
「先輩にそんな口をきくとは失敬な奴だ」
②軽い気持ちで、他人の物を無断で使ったり持ち出したりすること。
「仏壇のお供えの菓子を失敬する」
【運用例】
「前を失敬」
「ちょっと失敬、ライターを借りるよ」
今回取り上げたいのは、【運用例】にある用法です。
大学生の時、私が所属していたゼミの指導教授が、何かの折に学生に対して「失敬!」と言っていた記憶があります。
また、映画やTVドラマなどの中でも、ちょくちょく耳にしました。
今、「失敬!」と言っても、特に若い人には通じないのではないでしょうか。たぶん、「失礼」に置き換わったのだと思います。
「ちょっと失礼します」
「私はここで失礼します」
と言えば、今でも特に違和感はありません。
ところで、上に書いた語義の②はどうでしょうか。
「国語辞典」には、②の用例がもう一つ載っています。
「朝食バイキングのパンを余分に失敬して、夜食にした」
お供えの菓子といい、朝食バイキングのパンといい、何やら食い意地が張った人の言のようですが、それほど重大な違反行為とは言えなさそうです。
それが、語義にある「軽い気持ちで」ということなのでしょう。
ですから、
「深夜、某企業の○○支店に押し入り、警備員を2人殺して金庫にあった1億円を失敬した」
とは普通言わないわけです。
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