第13話 ピケ帽

 このエッセイは、今はあまり使われなくなった言葉について書いていますが、言葉の選択は、ほぼ100%私の気まぐれです。


 今日なぜか突然に「ピケ帽」という言葉が頭に浮かんだので、取り上げます。


 私がイメージするピケ帽は、釣り鐘つりがね型をしていて、その全周にツバが付いている帽子です。ちょうど、アニメの「ちびまる子ちゃん」がかぶっている帽子のような形です。

 著名な映画監督の小津安二郎おづやすじろうはピケ帽が好きで、よく被っていたそうです。ネットで小津の写真を検索すると、確認できます。

 今でも、幼稚園児や小学校低学年の児童などが、黄色いピケ帽を被っているのを目にします。

 ところが、ピケ帽という名前は、あまり聞かないように思います。


 もう一つ、ピケ帽の「ピケ」とは何なのでしょうか?

 私はてっきり、昔よく行われていた工場や会社の労働者が行うストライキに関係しているのかと思っていました。

 ストライキ関連用語に「ピケを張る」という言葉があります。ここでいうピケとは「ピケット=picket」の略で、「労働争議中、ストライキの裏切り者や妨害者を見張る人(所)」を指します。(「国語辞典」)

 私はなんとなく、「ピケ帽」とは、ピケを張る時に被る帽子だと考えていました。


 しかし、今回本エッセイを書くに際して少し調べたところ、それは間違っていることが分かりました。

 「国語辞典」によると、「ピケ」には二つの意味があります。

 一つは、上述した「ピケット」の略で、用例として「ピケを張る」「ピケ・ライン」とあります。

 もう一つは、フランス語piquéを語源とする「うね織りの(浮き出し模様のある)厚い綿(毛)織物。ピッケとも」で、用例は「ピケ帽」です。

 つまり、ピケ帽のピケは、スト破りを監視するピケとは関係がなく、帽子の布地の種類を表しているようです。


 インターネットでピケ帽について検索していたら、東京・銀座にある老舗しにせ帽子店のウェブサイトに、次のように書いてありました。


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”隠れた名品”


夏のうだるような暑さの中、近所に出かけるときにサッと頭にのせる帽子が欲しいと、多数のご要望にて別注制作しました。


この形に見覚えのある貴兄は多いはず、あの昭和の名映画監督、小津安二郎氏がかぶっていた帽子です。

その当時はピケ帽、登山帽と呼ばれていましたが、現在ではメトロハットと名称を変え、そう呼ばれています。

手洗いができる綿100%の生地を使用。まず染めることから始まり、縫製をしてから洗いをかけます。その後プレスして仕上げとなります。真新しさを感じさせない仕上がりが特徴となっています。


※銀座・トラヤ帽子店 ウェブサイトより

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 なるほど。今は「メトロハット」と呼ばれているんですね。


 別の帽子通販サイトには、メトロハットはクルーハットとも呼ばれると書いてありました。


 なお、インターネットを検索していたら、「ケピ帽」(ピケ帽ではありません)というものもあることが分かりました。

 これは、「円筒形の胴に天井が水平に張られ、ひさしが水平につくという外観が特徴で、おもにフランスの陸軍や警察で軍帽として使われてきた」(ウィキペディア)そうです。

 ケピ帽は、日本の軍隊でも明治時代に使用されました。例えば、陸軍の乃木希典のぎまれすけが着用している写真を、ネットで見ることができます。しかし、後にほとんど「官帽かんぼう」に置き換わりました。官帽とは、現在、警察官、駅員や電車の乗務員、自衛官などが被っている制帽です。


 どうでもいいような話題にお付き合いいただき、有難うございました!





 

 

 


 

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