第8話 謎 ホントカヤセイジ

 今回は、ちょっと脱線します。


 の一種で、掛詞かけことばというのがあります。

 たとえば、次のようなものです。


■その手は桑名くわなの焼きはまぐり


■恐れ入谷いりや鬼子母神きしもじん


 これらは、「国語辞典」や、ことわざに関する辞書にも掲載されています。


 比較的新しいところでは、


■あたり前田のクラッカー


というのがあります。藤田まこと主演のTV番組「てなもんや三度笠」で言ったセリフです。ネットを見ると、番組スポンサーだった前田製菓は、今も健在のようです。


 私の父は時々、


■そうはイカの金玉よ


などと口走っていました。父の創作かと思っていましたが、ネットを調べると出てきますので、そうではなかったようです。


 さて、表題に挙げたのも掛詞です。


■ほんとかやせいじ …… 本当ほんと茅誠司かやせいじ


 これを、小学生のころ、級友たちと口にしていた記憶があります。

 「それ、ほんとかよ?」くらいの意味合いです。


 茅誠司(1898~1988年)は物理学者で、東大総長を勤めました(1957~1963年)。確かに、総長を務めた期間は、私が小学生だった期間と一部重なっています。


 しかし、私が通っていた小学校は、ごく平凡な都内の市立小学校です。将来東大を目指すために英才教育を施す学校などでは、決してありません。

 なのに、なぜ小学生が東大総長の名を詠みこんだ掛詞を口にしていたのか?

 今となっては、謎というしかありません。(知っている方がいたら、ぜひご教示下さい)


 また、この掛詞の使用が、どの程度の広がりを持っていたのかも分かりません。私のいた小学校だけだったのか、もっと広がりがあったのか?

 ちなみに、都内の区立小学校出身の妻(私より4歳年下)は、まったく聞いたことがないと言います。


 なお、小学生のころ時々使っていた掛詞で記憶しているものが、もう一つあります。


■ばっかじゃなかんべいちろう …… 馬鹿ばっかじゃな神戸一郎かんべいちろう


 神戸一郎(1938~2014年)は、歌手、俳優、実業家です。1958年に歌った「銀座九丁目水の上」という歌がヒットし、同年から4年連続して紅白歌合戦に出場したそうです。

 この掛詞についても、妻はまったく記憶にないと言います。


 いずれにせよ、上の二つの掛詞は、今や私の頭の中だけにあるようです。いつか私が死ねば、一緒に消滅するでしょう。

 いや待てよ。カクヨムが存続する限りは、生き残るのかな?


※茅誠司と神戸一郎については、ウィキペディアを参考にしました。

 

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