納品
翌日。朝起きて日課をこなした私は、カナとのんびりと話していた。
『へーもう公認かぁ。やるなぁ』
「昨日配信サイトの方を確認してみたら、確かにチャンネル名の横にチェックマーク付いてた」
『そうそう。それが証。
動画配信サイトの方の公認は、登録者が2.30万くらいあれば勝手に付くんよね』
「へー。だからあっちの方は配信中に教えられたんだ」
『ん……あっち?
もう一個あるんか?』
「あー、えっとね。インクリの運営さんから連絡があってさ…………」
昨日のやり取りを話す。
と言っても、広告塔みたいな存在になったってだけだけど。
『なるほどなぁ。インクリもそういう感じなんやな』
「割とよくあるんだっけ? こういうの」
『一昔前、スマートフォンによるゲームが流行った時から始まった手法やな。
影響力、情報発信力の高い配信者を囲い込む……じゃないけど、そこに対して積極的に情報を回すことでより拡散性を高める……みたいな』
「へー。私が特にしないといけないことってないんだよね?」
『せやな。週何時間以上配信って言われたんならそれをきっちり守って。
あとはアプデ情報を貰ったら、向こうさんの指示に合わせて公開する動画を撮ってあげるくらいか。
基本的には普段通りでええってことやな』
「おっけー。認識が間違ってなさそうで安心したよー」
『ま、なんかあったら気軽に声かけてな。投稿者としては一応先輩やし?』
「頼もしい。ありがとう」
『あ、せやせや。公式が呟いとったけど、今日の正午に重大な告知あるらしいで』
カナが今話題に出しているのは、インクリ公式の発信だろう。
それによると、本日正午に大事なニュースがあるということで。
それは、ゲーム内からでも確認することが出来るらしい。
「私も見たよー。どんなニュースなんだろ」
『専らの読みでは、ついにイベントくるか! ってとこやな。
そろそろ1週間で慣れてきたとこやし、来週くらいにドーンとくるんちゃうか?』
「おー。イベントかぁ。どんなんだろ」
『さてな。予想はあるけど……お楽しみや!』
「そうだね。お昼にはわかるし。じゃあ、また後で……かな?」
『せやねー ほなまた!』
通話が終了。時間を確認……午前九時か。
とりあえずログインだけして、フレイさんが居たら素材持っていこうかな?
◇◇◇◇◇◇◇
と、言うわけでログイン。
本日最初のインクリの世界に降り立った私は、一先ずフレンドリストを確認する。
……リストと言っても、二人しか載ってない訳だけれども。
あ、居るね。メッセージ飛ばしておこう。
「えーっと、蜘蛛の素材手に入ったのでお届けしても良いですか…………っと」
文面を二度確認して、送信。 他人に送るメッセージってちょっと緊張するよね。
間もなく、返事が来た。 どうやらすぐ向かっちゃっても問題ないそうで。
丁度アジーンに居るわけだし、早速行こう。
間もなく向かうという旨を送って、歩き始める。
店へは、迷わずにすぐに着くことが出来た。
「こんにちはーー」
「いらっしゃい、ユキちゃん。待ってたわ。ちょっと上がってもらえる?」
フレイさんに導かれ、店に上がり込む。
対面に座ると、ぽんとお茶を出してくれた。
「ありがとうございます。こういうのもあるんですね」
「そうよー。なんだかんだ細かく作り込まれているからね。
街を歩いたなら八百屋とかも見つけたと思うけれど、ああいう店も普通に買えるのよ」
「あっ、そうなんですね。何となく、プレイヤーは関係ないのかなーって」
「もう一つの世界として何でもできる……っていうコンセプトだから。
その内、料理人とかも生まれるんじゃないかしら。プレイヤーに」
「へぇー! 面白そう。楽しみですね」
そっかそっか。そういう楽しみ方もあるのか。
ゲームの世界においても食を研究する人……なんだかかっこいいね。
「あ、素材持ってきてくれたんだっけ?」
「はい! 出しますね……えと、こう……でいいのかな?」
ちょいちょいとウィンドウを操作。
アイテム取引の画面を呼び出すと、フレイさんの方に素材を送る。
「ありがとう。流石ねぇ。ジャイアントスパイダーの糸がこんなに……」
「あー、えっと、それは…………あ、あればあるほど困らないかなって」
「そうね。運営公認の技になっちゃって八つ当たりとかじゃないわよね」
「あーー! そういうこと言うんですねっ!?」
むすーーっと頬を膨らませる。
敵か? フレイさん、貴女は敵なのか??
「うふふ。冗談よ。…………可愛かったけど」
「聞こえてますからね?」
「コホン。……素材はもう充分だから、後はちょっとこっちで調整して作り始めるわね。
なるべく早め……そうね、最長でも数日中にはまた連絡入れるわ」
「はーい。お願い致します!」
「そうだ、デザインの草案とかみておく?」
「んー。お任せのままで。完成品楽しみにしたいなぁって」
「ふふ。わかったわ。 頑張ってユキちゃんにピッタリのものつくるから」
「期待してますっ」
どんなものを作ってくれるんだろう。出来あがるまでが待ち遠しい。
挨拶をして、その場を辞する。
さてさて、どうしようかな。
時刻としては、まだ十一時前後。あと一時間位で公式の発表があるんだっけ。
一旦ログアウトしちゃって、早めのお昼を食べて待機してようかなー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます