聖女っていうより……
意識が浮上する。外はすっかり日が落ちていた。
よいしょとベッドから起き上がって、身体をほぐす。
とりあえず、ちゃちゃちゃっとご飯を作ろう。今日はカレーにするつもり。
作ると言っても、お昼のうちに下ごしらえとしてかなり進めてあるので、大した工程は残っていない。
手際よく作り終えて、器によそう。お皿はもちろん、二人分。
理由は言うまでもなく──
ピンポーンと、インターホンがなった。
配膳をいったん止めて、応対する。
「はいはい」
「来たで」
「開いてる」
「ん」
ガチャっと音を立てて、玄関の扉が開かれる。
私は出迎えに出る……のではなく、配膳の続きだ。
「なんやなんやー 親友の到着に出迎えなしかー?」
「お腹すいてるかなって」
「うーん否定出来ん!」
「ふふっ。さき食べよ」
「手ぇ洗ってくるわ!」
カナが手を洗っているうちに配膳も終わり、二人揃って着席。
手を合わせて……『いただきます』
「ん~~うまぁ」
「そう?」
「さすが深雪やで!」
「ふふ。まぁカレーは失敗するほうが難しいってよく言うから」
料理は分量と愛情ってお母さんが言っていた。
正確に量った上で気持ちを込めて作れば、絶対に美味しいものが作れるってお話。
まあ、卵料理みたいに、そもそも失敗しやすいものはあるけどね。
「それはそうと、かなりぶっ飛んだことになってきたみたいやん?」
「そうなんだよ~S3エリアあったでしょ? あそこのボスに挑もうとしたら変なことになっちゃって」
晩御飯を食べながら、のんびりと雑談。
話題はもちろん、Infinite Creationのことだ。
あっという間に食べ終わって、片付けを進めながらも話は続く。
二人揃って同じゲームをやりこんでいると、無限にその話ができるからとても楽しいね。
さて。盛り上がっているうちに、気づけばもうすぐ21時。
「あ。そろそろ時間だ」
「配信続きするんやっけ?」
「そーそー。まだ確認してないものもあるんだ」
「あー、内包技能ってやつ」
頷きを返す。さっき大体は話したから、改めて触れはしない。
今日はこのままお開きということになり、玄関まで見送る。
「あ、せや。明日の休み、ウチに泊まりにけえへんかってお母さんが」
「あ、ほんと? やったー行く!」
「おっけー決まりや。伝えとくわ」
「お願い~~」
ひらひらと手を振って、奏は帰っていった。
明日お泊りか~。 結構久しぶりだなぁ。
カナのお母さんが最近ずっと忙しかったから。 一ヶ月ぶりくらいかな?
ふふ。楽しみ。明日はお土産にクッキーでも焼こう。
さて。じゃあそろそろゲームしよっか。
SNSを開いて、『予定通りこれから再開します』とだけ発信。
さ。やっていきましょーか!
◇◇◇◇◇◇◇◇
ログインした私は、すぐにカメラを呼び出す。
「ん。じゃあよろしくね」
ふよふよと飛び始めるカメラドローンを撫でてみると、くるりと横に一回転。
ちょっとしたことに和んでいるうちに、配信中との表示が右端にでてきた。
「お。どうかな。始まったかな」
『わこ』
『わこつ』
『待ってた』
「大丈夫そうだね。 みんなこんばんは~ユキだよ」
軽く手を振って、挨拶。
さっそくだけどもウィンドウを可視化していこう。
「開始早々だけども、内包技能をチェックしていくよ」
『おー』
『888』
『早速すぎるw』
私も気になっていたからねぇ。まず最初は……
◆◆◆◆◆◆◆◆
技能:祈り
効果:自身のHPかMPを代償に捧げて発動。
単体のHPとMPを回復する。効果量は代償の半分。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「いきなりピーキーなの来たなぁ!!」
『草』
『何故か対応されるHP』
『MPが枯渇した時もその身を犠牲にできるとかいうコンセプトなんだろうね』
『なお』
まさかの自己犠牲スキル第二弾。まぁ、実情はコメントの通りなんだろうけども。
ここの運営さんはあれだね。多分だけど聖女に献身性とかを求めているんだろうね。
なにはともあれ、HPを使えるのはありがたい。少なくとも選択肢の一つにはなる。
さて。次のやつ行こうか。
◆◆◆◆◆◆◆◆
技能:唄
効果:特別な効果が刻まれた唄を歌う。消費はない代わりに、ある程度歌うことで初めて効果を発揮する。
[鎮魂歌(レクイエム)] [聖譚曲(オラトリオ)] [子守唄(ララバイ)]
◆◆◆◆◆◆◆◆
ほぉ……ホントに歌うことをある種の武器にできるということなのか。
そう言えば、このゲームって詩人みたいな職業はまだ出てきてないよね。
『これからは定期的に歌聴ける説』
『神か?』
『運営わかってる』
『いや最後よw』
『各歌ごとに効果違うん?』
「えーと、レクイエムが不死属性へのダメージ並びにデバフ効果。オラトリオが広範囲回復だって。
最後は…………うん。攻撃ダウン稀に睡眠付与って書いてる」
『草』
『いやかなり有用なんだがw』
『これもう戦闘の度に子守唄では??』
『わざとだろ運営www』
『配信で子守唄連打する配信者w』
『最高かよ』
「しない! しないからね!?」
くそう。このわざとらしく三つ目に入って来ている感じ、運営もわざとねじ込んできたんじゃないかって錯覚してしまう。
流石にそれはないだろうけども!
ちょっとだけ釈然としない思いはあるけど、次行こ、次。
「最後の一つ、行くよ!!」
『おっ』
『三つ目』
『なんだっけ?』
『聖魔法』
『おーー』
『魔法か』
『ん?』
『いやw』
◆◆◆◆◆◆◆◆
技能:聖魔法
効果:聖属性の魔法を扱うことが出来る。不死や闇の属性に特攻。
[ホーリーボール]
◆◆◆◆◆◆◆◆
「わー! 私にも普通の魔法っぽいのが生えてきたよ!」
カナの火魔法のような、いわゆる普通の属性魔法。
魔法ってものに憧れる気持ちはみんなあると思う。
特に、あんな超威力な親友を観ていると尚更だよね!
ウィンドウを操作して、ホーリーボールとやらの説明をみてみよう。
カナのファイアボールと似たような感じだとは思うけど。
「えーと…………ホーリーボール。聖属性。消費MPは5で、威力はINTの値に依存する」
『ほう』
『さてここでユキのステータスを見てみましょう』
『察した』
『MP0! INT0!!』
『あっっ』
『あ…………』
『魔法性能0の女』
『なお殴ったら強烈なカウンターが飛んでくる模様』
『もはや聖女というより凄女』
「知ってたよ。ちくしょう!!!!」
あとちらっと見えたけど凄女(セイジョ)って言ったの誰ですかね!!表出ろーーい!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます