クラスチェンジ ユキの選択
[浄化]が決まり、ジャイアントスケルトンが天に還った。
元のフィールドに戻され、同時に多くのインフォが鳴り響く。
『ジャイアントスケルトンの討伐に成功しました』
『特殊クエスト[聖女への道 終]を完了しました』
『特殊職業[聖女]の資格を得ました』
『只今の戦闘経験によりレベルが20になりました』
『只今の戦闘経験により[聖属性の心得]が[聖属性の極意]になりました』
『只今の戦闘経験により[格上殺し(ジャイアントキリング)]を修得しました』
『クエスト達成報酬により[神の試練を乗り越えし者]を獲得しました』
『特殊ボス討伐によりボーナスポイントが付与されます』
「おわっったぁぁ~~!!」
思わず地面に座り込む。力が抜けちゃった。
『8888』
『おつ』
『お疲れ様』
『良い戦いだった』
『おつー!』
「ありがと~ 駄目だ。力入んないや」
『激戦だったもんな』
『アチアチだった』
コメントの人たちが労ってくれるのが、心に染みる。
頑張ってよかったーー! って、そんな感じ。
「一つ一つ確認していくから、ちょっと待ってね」
まずは増えた技能二つを確認していこう。
一つは進化っぽかったよね。
◆◆◆◆◆◆◆◆
技能:聖属性の極意
効果:聖属性攻撃の威力を10%向上させる
条件:聖属性の攻撃で敵を100体以上倒し、かつ一定以上の累計ダメージを与える
◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
技能:格上殺し
効果:相手のレベルが自分より5以上高い時、STRとINTの値を20%増加させる
条件:レベルが10以上離れたボスエネミーを、半分以上の貢献度を出して討伐する
◆◆◆◆◆◆◆◆
聖属性の極意は、単純に強化って感じで嬉しいね。
10%ってかなり大きいんじゃないかな……?
格上殺しは…………うん。これ私に関係ないや。
「ジャイアントキリングとかいうスキルもらったんだけど、効果がSTRとINTの割合上昇だってさ」
『草』
『0に何かけても0なんだよなぁ』
『完全死にスキルw』
『極振りの宿命』
期待通りというべきか、視聴者さんたちは盛り上がってくれているかな。
はい。供養おしまい。間違いなく有用なスキルではあると思うんだけど、残念ながら私には縁がなかったと言うことで……
気持ちを切り替えて、称号。
◆◆◆◆◆◆◆◆
称号:神の試練を乗り越えし者
効果:神職に就くNPCからの好感度に大幅上方補正
説明:神から与えられた試練を見事乗り越えた者の証。これを持つものだけが、神の奇跡を扱う資格があるとされる
◆◆◆◆◆◆◆◆
うーん。これまた表現がご大層な。
結構曖昧だけど、まぁこれも持ってて損は無いって程度の認識で良いだろう。
神の奇跡ってなんだろね。
忘れないうちに、ボーナスポイントも振っておく。
これで最大HPは3713。うんうん順調だ。
さあて! これでほかの確認は終わったかな。
いよいよお待ちかね、職業に触れよう。
「みんなお待たせー。いよいよ、クラスチェンジに触れるよ」
『お』
『待ちわびた』
『みせてくれるのか』
『気前いい』
『やったぜ』
「せっかく配信してるからねー。転職に関しては、見せられる限りウィンドウ可視化しとくよ」
盛り上がるコメントを横目に、ウィンドウを操作。
『クラスチェンジができます』という通知があるのを確認して、タッチする。
『レベル20に達したため、クラスチェンジをすることが出来ます。今すぐ行いますか?』
『転職先は、以下の三つです。騎士、超重戦士、☆聖女』
ほほう? 騎士と超重戦士ってのもある。
これらが正規というか、普通のクラスチェンジ先ってことかな。聖女だけなんか☆付いてるし。
「お。転職した場合のステータスを表示できるみたい。せっかくだしやってみるね」
ポチポチと画面を操作し、三つそれぞれでのステータス変化を並べてみる。
尤も、HP以外はほぼ零に等しくて大差ないので、省略で。
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:ユキ
職業:騎士
レベル:20
HP:4582
MP:0
◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:ユキ
職業:超重戦士
レベル:20
HP:5390
MP:0
◆◆◆◆◆◆◆◆
◆◆◆◆◆◆◆◆
名前:ユキ
職業:聖女
レベル:20
HP:3790
MP:0
◆◆◆◆◆◆◆◆
「うーん。私、超重戦士で良い?」
『草』
『笑う』
『HPがw』
『自ら聖女の選択肢を捨てる女』
『特殊職業の扱いよ』
「えーだって……全然違うよこれ」
HPだけ考えた時に、1.5倍近くまで差があるのは如何なものなのか。
ほかのステータスの補正が高かったところで、私に関係あるのはHPだけだし……
『まぁでも、わざわざ特殊職って銘打って弱いってことはないのでは』
『そもそも明らかに後衛ポジだしな』
『寧ろ少しでも今より伸びるのが凄い』
『とりあえず餅ついて比較して』
『ぺったんぺったん』
『お前じゃねえww』
「ん~~」
HPだけを考えれば、ここは超重戦士で良いだろう。
けどまぁ、HPが自分より高い相手にはまず勝てないって現状をどうにかしたいと思っていたのも事実で。
ゲームを始めた当初は、カナのサポートメインで良いかな~とか思っていたけど。
今の正直な気持ち……もっと色々なことをできるようになりたい。もっと面白そうなことをやりたい。
それに、配信してるんだから。今のとこ唯一性があってネタになりそうなことやったほうが良いよね!
「お餅食べたくなってきた。落ちていい?」
『いや草』
『転職は??』
『今の間は、餅について考えていたのか……?』
『転職<<餅』
『まさかの食いしん坊キャラ』
「あはは。冗談。
あ、でも食べるのも作るのも好きだよ~。一人だと手抜きになるけどね」
他愛のない雑談をしながら、各職業の説明に目を通しておく。
騎士は、正統派というべきか。重装備が可能で魔法にも適応できる万能型戦士といったところ。
超重戦士は、重装備をより突き詰めた感じ。圧倒的防御特化で、装備の重量を活かした攻撃もできるらしい。
そして最後が、聖女。これはそのままウィンドウ表示させちゃおう。
◆◆◆◆◆◆◆◆
聖女 特殊職業
類まれな才に恵まれた者のみがなることができる聖女見習いだが、晴れて聖女と認められるには充分な実績を積んだ上で厳しい神の試練を乗り越える必要がある。
険しく狭き門をくぐり抜けた聖女はまさしく国の宝として崇められ、聖女もまた、来たるべき日に備え更なる修練を重ねるのだ。
HPに1.3倍、物理攻撃力、防御力に0.8倍補正。魔法攻撃力、防御力に1.3倍の補正。
職業技能【聖女】を修得できる。
※これは特別な職業であるため、物語に強く関わることになる可能性があります。
◆◆◆◆◆◆◆◆
説明文がまず大仰(おおぎょう)。すんごい御大層なこと書いてあるけども、これってどうなんだろう。
店の人や受付の人がやたらリアルだったこのゲーム。確かキャッチコピーも『もう一つの世界』とかいうフレーズが入ってたんだっけ。
もしかしたら、聖女って職業は私の考える以上に重くて、ここで選ぶことでなにか大きなことが起こるのかもしれない。
まあ、でも。
「ここまで来て選ばないのは、ちょっと違うよね~」
なにかが起こるなら、その起こったものを全力で楽しめば良い。
私にはカナがいるし、視聴者さんたちもついてくれているからね。
『お?』
『決めたん?』
「うむ。 私は、聖女になるよ!!」
『うーんこのセリフのパワーよ』
『「私は聖女になる」』
『切り抜き不可避』
『ででーんって効果音付きそうw』
「あーもう! またそうやってからかう!! なっちゃうからね! 聖女に!」
むすっとした表情になりながらも、ウィンドウを操作。
『 聖女 を選択しますか?』
もちろん、イエス。
『プレイヤーネーム ユキのクラスチェンジが完了しました』
『レベルキャップが100まで開放されます』
『職業技能【聖女】を修得しました』
「おー…………おお?」
流石に、聖女になった瞬間に衣装が変わるだとか、なにか演出があるとか、そういうのは無かった。
神が認めるーとかクエストに書いてあった気がするし、イベントでもあるんじゃないかと期待してたんだけども。
体の感覚が変わるということもない。 いやまぁ、もともとHP以外0なんですけど。
ただ、間違いなく私のステータス欄には聖女と記載されていた。
「えーと。聖女になったみたい……です?」
『疑問形w』
『語尾にハテナみえてるぞ』
『実感なさそう』
『演出とかはないんだね』
『たしかに』
「ねー。なにもないんだねぇ」
あ、そうだ。技能が新しく増えたんだっけ。そっち確認しなきゃ。ウィンドウを可視化して……っと。
◆◆◆◆◆◆◆◆
職業技能:聖女
説明 :特殊クラス【聖女】専用に割り振られたスキル。
多くの技能を内包し、持ち主とともに成長する。
内包技能:【祈り】【唄】【聖魔法】
◆◆◆◆◆◆◆◆
「ほう……ほう??」
『成長系のスキル?』
『なにそれ』
『でも普通のスキルも別に成長するよな。属性魔法とか武器系とか』
『あー』
『どういうこと?』
「ん~どういうことだろう。フレーバー要素的な感じなのか、意味があるのか。
ま、しばらくしたら色々わかるんじゃないかな」
『せやね』
『たしかに』
『内包ってのが興味深い』
『増えるのかな』
『唄』
『うた』
『お?』
『運営様もお認めになった』
『神ヴォイス』
『ほう』
「ちょっと待ったその話は今は無し!!! 恥ずかしいから!
それに運営さんが認めたって、違うでしょたまたまでしょ!」
ああもう。好き勝手言ってくれちゃって。
いくらなんでも、あの一回だけでスキルに関わってくるわけないでしょうに!
気を取り直して。
えっと、聖女になった影響があるかどうかであったり、そもそもエリアボスどうなったんだってことであったり。
あとは、内包技能とやらの確認もか。
今すぐ確かめたいことは沢山あるんだけども、流石にそろそろ時間も押している。
「まだまだ気になることはあるとおもうけど、一旦ここで切り上げるね!」
『お?』
『ああ、もう夜だもんね』
『ぶっ通しだったもんな』
『ワイも晩ごはん食べてないわ』
『俺もだ』
『俺も』
『夜勤なう……9連目』
『あっ』
『お疲れさまです』
「そうなのよ。だから一旦休憩。と言っても色々気になることも多いし、21時位からもう一回配信するね。
夜勤の人は強くいきて……!」
例の夜勤の人、しっかり継続中なんだね。
ん? ちょっと待て。nowってなんだ大丈夫なのか。
ま、まあそこは本人に委ねよう。自己責任ってやつだ。当然。
「それじゃあ、配信切るね。ばいばい!」
カメラに手を振って、配信を終了する。
ふわふわ~とこちらに飛んできたドローンをなでてあげると、くるんと回って消えていった。
さて、じゃあちゃちゃっと用事済ませて、戻ってきますか。
最後に、今もログインしているカナにメッセージを飛ばして。私はログアウトを選択した。
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