二日目 ♡ーQ

 剣から事件の真相を聞き終えた僕は体育館へと向かった。

「大丈夫だって、四葉たちがいま何とかしてくれてるんだから。俺らができるのは待つことくらいだよ」

 体育館、ステージ脇では燕尾服姿の岸山が逸見の肩を叩いていた。

「ほら、準備できるようにスタンバってな」

 逸見を送り出したところで、岸山はようやく僕に気づく。

「どうだった、天岳先輩は」

「……ああ。まあぼちぼちやっているみたいだ」

 それは良かったと、岸山ははにかむ。

「それで舞台はどうするんだ。衣装の方は何とかなると聞いたが」

「衣装が届くまで俺が回すよ。脚本家の先生が台本を用意してくれた」

 シルクハットを人差し指でくるくるとまわしながら答える岸山。余裕そうなその姿をぼうっと見ていると、岸山が僕の背を叩いた。

「何で愛川が緊張してるんだよ」

 苦笑い気味に話す岸山を見て、思わず問いがこぼれる。

「お前こそ緊張、していないのか?」

「いまさらするわけねえだろ。一年の時じゃあるまいし」

 呆れたように岸山は返す。

 そうこうしているうちに館内に開演を告げるブザーが鳴った。

「そろそろ行ってくるわ」

 飄々とした様子でステージへと向かう岸山の背に「あとで話がある」と呼びかける。

「分かった」

 振り返ることなく、岸山はそう答えた。

 ステージの中央に岸山が到着する。慣れた様子で肩を回すその姿は、在りし日の天岳先輩と重なった。

 僕はステージの脇で立ち尽くすのみ。

 幕が上がる。

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